【5月19日 AFP】アフリカ北端のスペイン海外領土セウタ(Ceuta)の海岸に17日以降、国境を接するモロッコから過去最多となる約8000人の移民が流入した。スペインのペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は翌18日、「秩序回復」を宣言して現地へ急行。スペインはモロッコへの外交圧力を強めている。

 スペイン内務省は、17日朝から8000人近くの移民がセウタに流入したが、半数はすでにモロッコに送還されたと発表。同国当局によると、男性1人が水死した。内務省によれば、スペイン政府は配備済みの警察官200人に加え50人を現地に追加派遣する予定で、さらに150人を待機させている。

 スペインのアランチャ・ゴンサレス・ラヤ(Arancha Gonzalez Laya)外相はモロッコの大使を呼び、モロッコの治安当局が移民数千人のセウタ流入を黙認したことに「不快感」を表明。記者会見で「国境管理は従来も、またこれからもスペインとモロッコの共同責任であるということを(大使に)念押しした」と語った。

 その直後、モロッコ外務省はスペインから大使を召還したことを明らかにした。

 スペインのサンチェス首相は、急きょ現地入りを決定。出発前、「セウタと国境の秩序をできるだけ早く回復する」と宣言し、さらにセウタの東400キロに位置する海外領メリリャ(Melilla)も訪れる意向を示した。

 スペインとモロッコはこれに先立ち、モロッコが領有権を主張するアフリカ北西部の係争地・西サハラ(Western Sahara)をめぐる政治問題でも緊張を高めていた。スペインは、新型コロナウイルス感染症が重症化した西サハラ独立派武装組織「ポリサリオ戦線(Polisario Front)」の指導者ブラヒム・グハリ(Brahim Ghali)氏に対し治療を提供。モロッコ側はこれに反発した。

 モロッコがセウタへの移民流入を黙認したことについて、アナリストらは、自国の西サハラでの主権をスペインに認めさせるための外交的圧力が目的だったとみている。

 映像は現地メディアEL FARO TVが17、18日撮影・提供。(c)AFP