【5月24日 東方新報】飼い主に代わってペットと過ごす、家族に代わって子どもを塾に送る、お年寄りと旅行する…。中国で最近、こうした「付き添いビジネス」が増えている。経済成長に伴い人々のライフスタイルが多忙化した影響だが、「陪伴師(付き添い師)」と呼ばれる仕事の収入は多くないため、需要には追いついていない。

 北京市の周婷(Zhou Ting)さんはペットの付き添い師として忙しい日々を送る。中国では空前のペットブームが続き、特に増えているのが、猫を飼う20~30代の独身女性。残業や出張、帰省、旅行などで不在の飼い主に代わって周さんは依頼人の家でペットと過ごし、水の交換やえさやり、トイレ掃除、グルーミングなどを行う。家にいる間はスマートフォンの動画や小型カメラを通じてペットを世話する様子を撮影し、依頼人がいつでも「生中継」で様子を見られるようにしている。

 周さんは「自分のかわいい犬や猫を、慣れないペットショップに預けるのが不安という飼い主さんが依頼してきます。常連さんだと、飼い猫が私の顔を見て懐(なつ)いてくれるのがうれしいですね」と話す。

 人材マッチングサイト大手「BOSS直聘」のプラットフォームには、「ペットの世話」「子どもの塾の送迎」「高齢者の付き添い」「ランニングの付き添い」など、付き添いビジネス関連で2万件以上の募集がある。BOSSによると、こうした依頼主は主に消費水準が高く、生活のスピードが速い大都市に集中している。高齢者の付き添いに関する仕事の80%以上は、北京市や上海市、広州市(Guangzhou)など人口が経済規模でトップ20に入る大都市の住人からの募集という。

 民政部によると、中国では1人暮らしの国民が8000万人に上る。独身者を対象とした支出調査では、57.6%が「寂しさを解消するためにお金を使う」と答え、そのために月に約1000〜3000元(約1万7000~5万1000円)を使う人が40%以上、3000元〜5000元(約8万4900円)を使う人が34%いた。

 中国ではほとんどの夫婦が共働きだが、仕事より自分の生活を優先して定時にきっちり帰り、子どもの世話をする家庭が多い。しかし近年は経済成長に伴い収入が増えるにつれ、仕事も多忙となっている。また、2019年では婚姻届が約947万件に対し離婚届は約415万件に上り、ひとり親の家庭も増えている。一方で子どもの受験戦争は日本よりはるかに厳しく、小学校低学年から家庭教師をつけたり学習塾に通わせたりするのは当たり前。こうした背景から、親の代わりに子どもの塾の送迎や、自宅で子どもが勉強しているのを見守る「付き添い師」の需要は高い。

 ただ、こうした付き添い師の月収は5000元未満が大半。依頼主の注文やクレームも多く、「割に合わない」という声が多い。ペットの付き添いをする周婷さんも「猫や犬が好きだから続けられる仕事。貯金はまったくできない」と話す。

 BOSSの雇用コンサルタントは「経験不足の付き添い師がトラブルを起こす事例もある。付き添いビジネスは社会の発展に伴う必然のニーズととらえ、付き添い師の待遇の改善や教育など社会的なサポートが必要」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News