【5月23日 東方新報】香港発の人気キャラクター「B.Duck」を模倣したアヒルのキャラクターを作ったとして中国企業が訴えられた訴訟で、広東省(Guangdong)の高級裁判所(高裁に相当)は4月下旬、「デザインは著作権侵害に当たらない」とした1審判決を支持し、控訴を棄却した。「B.Duck」は中国で知らない人はいないほど人気で、裁判も注目されていた。

 素朴でかわいらしいデザインの「B.Duck」は、香港企業の森科(Semk)のキャラクター。同社はオリジナルキャラクターについて企業とライセンス契約を結び、グッズ製造権やイメージキャラの使用権を与えて収益を上げている。「B.Duck」はその主力だ。中国では牛丼の「吉野家(Yoshinoya)」のキャラクターにも使われている。韓国や北米、南米にも進出し、日本でもおもちゃやスマホケース、子ども用ヘルメット、タオルなど多くの商品が売られている。

 訴訟のきっけかは2019年6月、中国の企業が広東省で「クルミのアヒル」というキャラクターのライセンス契約展示会を開催したことだった。森科から中国本土のライセンス契約を受けている企業が「クルミのアヒルはB.Duckのデザインを盗用している」としてライセンス活動の停止と50万元(約850万円)の賠償を求めて提訴した。しかし、一審判決は「B.Duckとクルミのアヒルは正面、背面、側面から見て明らかな違いがあり、デザインのコンセプトも異なる」として請求を棄却。そして控訴審も同じ判断をした。

「B.Duck」と「クルミのアヒル」は全身が黄色で目が黒く、くちばしが大きくて頭に少し突起があることは共通しているが、一見して「そっくり」とまでは言いにくい。うさぎの耳の帽子をかぶったアヒルなど、「クルミのアヒル」のいくつかのデザインは「B.Duck」の先行商品と似たイメージも受けるが、裁判所はキャラクター本体の類似性に焦点を絞って判断した。

「B.Duck」の基となるデザインは、「香港の黄色いアヒルの父」といわれる林亮(Lam Leung)氏が考案したもので、1948年、香港初のプラスチックのおもちゃとして製造された。林氏は中国で1978年に改革開放政策が始まって以降、香港の実業家として初めて中国本土に工場を設立した。アメリカの大手おもちゃメーカー「ハズブロ社」と提携して中国向けのトランスフォーマー(Transformers)を製造し、「中国トランスフォーマーの父」とも呼ばれている。広東省にルーツを持つ林氏にとって今回の訴訟は、中国の子どもたちに夢を与え、中国の経済発展に長年協力してきた思いが裏切られた気持ちもあるのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News