【5月16日 AFP】新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、不妊症を引き起こす恐れがあるとの偽情報がオンラインで拡散している。米国では接種をためらう人も出ており、専門家らはこうした恐怖をあおる主張は事実無根だと説いている。

 フェイスブック(Facebook)で出回っている最もひどい偽情報の中には、ワクチンを接種してない女性が接種済みの男性との性交渉により不妊症になる、接種を受けた人の97%が不妊症になる、さらにはワクチンが「一世代全体を不妊にする」といったものまである。

 米国ではワクチン接種のペースがすでに鈍化しており、こうした主張はジョー・バイデン(Joe Biden)政権が掲げる集団免疫獲得という目標の脅威となっている。

 今月発表された調査では、ワクチンを「絶対に」接種しないと回答した人の3分の2が不妊の影響を懸念していた。

 調査を行った専門家によると、18~49歳のワクチン未接種の人のうち女性は約50%、男性は47%が「新型コロナウイルスワクチンは将来的に生殖能力に悪影響を及ぼし得る」と答えた。

■医学界「証拠なし」

 ワクチンの臨床試験(治験)の初期に妊婦が含まれていなかったことが、デマ拡散につながった。また、最近の反ワクチン運動の盛り上がりに伴って接種を受ける人の数も減少している。

 マサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)のデボン・グレイソン(Devon Greyson)教授(ヘルスコミュニケーション学)は偽情報について、ほとんどは科学的に正確かどうか関係なく、これまでのワクチンをめぐって人々の恐怖心をあおるために言われてきたことが、新しいワクチンに対しても言われているだけだと指摘する。

 偽情報が女性をターゲットとしているのは「出産は私たちが非常に強く反応する事柄の一つであり、非常に個人的なことである」ためだと述べた。

 ボストン大学医学部(Boston University School of Medicine)のキャサリン・オコンネル・ホワイト(Katharine O'Connell White)准教授(産婦人科学)も、「多くの女性にとってワクチンをめぐる不妊への懸念は、女性であることの意味の核心を突くことだ」と述べた。

 米国産科婦人科学会(ACOG)、米生殖医学会(ASRM)、母体胎児医学会議(SMFM)は、共同声明で「ワクチンが生殖能力の喪失につながり得るとの証拠はない」と発表している。(c)AFP/Claire SAVAGE