【5月13日 AFP】フランス東部ビュール(Bure)の地下500メートルに掘られた広大なトンネルの中を、「スカール(Scar)」と名付けられた犬型ロボットが慎重に進んでいく。さまざまなセンサーを搭載したスカールは、人間が立ち入るのをためらう危険な場所での対応を想定した訓練の真っ最中だ。

 ここは、仏各地の原子力発電所から排出される大量の放射性廃棄物が貯蔵される予定の地下処分場、地層処分産業センター(CIGEO)の研究施設。スカールにとって理想的な訓練場といえる。

 スカールは、仏北部ナンシー(Nancy)にあるナンシー鉱業学校(Mines Nancy)の研究チームが「調教」している機体だ。米ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)が開発したロボット犬「スポット(Spot)」をベースにしている。

 ナンシー鉱業学校は、昨年9月にフランスで初めてスポットを購入し、「複合型ロボット支援システム」のフランス語の頭文字を取ってスカールと命名。今月11日、CIGEOの研究施設で試験を行った。

 スカールは遠隔操作で操縦することも、自律して動くこともできる。研究者にとっては、さまざまな作業の自律制御プログラムを構築する機会を提供してくれる存在だ。

 そして、人間には容易に立ち入れない場所や、被ばくリスクの高い場所にもスカールは進入し、周囲を点検できる。

 CIGEOを管理する仏放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の技術者、ギヨーム・エルマン(Guillaume Hermand)氏は、「人工知能(AI)を開発して深地層貯蔵施設の監視に利用したいと考えている」と話した。

 スカールの活用法としては、特定の空間やルートにおける定期的なデータ収集と調査を行わせ、微細な地質的変化をいち早く研究員に警告するという運用が考えられる。また、大型の機器を投入できない場所で事故が起きた際も、スカールなら直ちに向かわせることができる。(c)AFP