【5月14日 AFP】首から下がまひした男性が、画面を食い入るように見つめている。男性が手で文字を書くのを想像すると、その文字が画面にタイプされて現れる。

 65歳のこの男性が「タイプ」する速さは、同世代の人がスマートフォンで文字を打つのとほぼ同じだ。これを可能にしているのは、新たな脳インプラント技術だ。

 この研究に関する論文が12日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。論文の筆頭著者で、米スタンフォード大学(Stanford University)の科学者フランク・ウィレット(Frank Willett)氏は、同研究は脊髄損傷や脳卒中、運動ニューロン疾患の患者に恩恵をもたらすことができるだろうと語る。

 体がまひした患者のための既存の装置は、眼球の動きや、カーソルを動かして文字をポイント・クリックするイメージに頼ってきた。

 だがウィレット氏率いるチームは、文字の手書きを思い浮かべることによっても、思いを表現することができるかもしれないと考えた。

 研究は「T5」とニックネームが付けられた男性を対象に行われた。男性は2007年に脊髄に損傷を受け、首から下がまひしている。

「T5」の左脳に、錠剤ほどの大きさのブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)チップ二つが取り付けられた。これにより、手の動きをつかさどる運動野でのニューロンの発火が検知できる。

 出された信号はセンサーによってコンピューターに伝達され、AI(人工知能)のアルゴリズムによってタイプした文字に変換される。