【5月30日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が始まって以来、カナダと米国の国境は閉鎖されている。ただ、自宅で小包の受け渡しサービスを営むポールモーリス・パテノード(Paul-Maurice Patenaude)さん(82)にとっては、閉鎖されることはなかった。国境の上に住んでいるのだ。

 建物の1階には、国境を示す黒い線が引かれている。パテノードさんはその両側に片方ずつ足を置き、「私はケベック(Quebec)州とニューヨーク州の両方にいる。すごいだろ」と笑う。70年間、ここに住んでいる。

 この「小包受け渡し所」には、仕分けされて棚に保管されている大小さまざまな小包が、受け取りに訪れる人を待っている。

 建物は築200年で、バーや食料品店だったこともある。石と木で造られた3階建てで、二つの住所と二つの玄関を持つ。

 家の南側は米ニューヨーク州にあり、米運輸大手フェデックス(FedEx)や米運送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)が荷物を運んでくる。一方、家の北側はカナダ・ケベック州の人口420人ほどの小さな町、ダンディー(Dundee)にある。こちら側には、カナダ人の客が荷物を受け取りに来る。

 この家は、1842年の条約によってカナダと米国に分けられた数少ない建物の一つで、荷物の中継地になっているのはこの家だけだとパテノードさんは言う。

 受け渡しの手順はシンプルだ。米国側から荷物が届くと、それを家の反対側まで持って行き、カナダ側の客がそれを受け取る。そのまま隣接するカナダ国境サービス庁(Canada Border Services Agency)の窓口へと運び、内容物の確認を受けて、関税を支払う。