【5月12日 AFP】2歳になるマナティーの赤ちゃん「ラティバ」は、救命具を着けなければ水面に上がってきて呼吸ができないほど弱っていた。

 ラティバは、幸運に恵まれていた。米フロリダ州ではこれまでにないペースでマナティーが死んでおり、動物病院の「病床」は限界に達している。

 4月初めに救助された時、ラティバは赤潮や有害な藻類の増殖が原因の「有害藻類ブルーム」によって起こる、強力な神経毒ブレベトキシン(神経性貝毒)の深刻な症状を示していた。

 ラティバは、自分で呼吸できるようになったが、今も集中治療用の水槽で状態観察が続けられている。隣にいるベリッシマは発見当初、栄養失調で船と衝突して重傷を負っていた。

 フロリダ州のマナティーの主な死因には、人間が使用した化学肥料が原因で発生した赤潮や生息地での餌の喪失、船との衝突によるショックなどが挙げられる。

 今年に入り同州では、死骸となって見つかるマナティーが急増している。

 フロリダ魚類・野生生物保存委員会(FWC)によると、1月1日から4月半ばまでにフロリダ水域で発見されたマナティーの死骸は674頭に上る。

 これは過去5年間の同期に発見された死骸の約3倍に相当する。

 ラティバとベリッシマは、容体が落ち着き次第、回復用の水槽に移される予定だ。回復用の水槽では約20頭のマナティーが、元の環境に戻れるようになるまで保護されている。餌はレタスだ。

 フロリダ州には、マナティーの保護施設が5か所ある。タンパ(Tampa)の施設が最大で、集中治療用の水槽3槽を有する。

 しかし、今年に入り死亡率が急増していることから、これら保護施設の能力は限界に達している。

 フロリダ州東岸で今年、マナティーがこれほど多く死んだのは、過度な肥料や下水により有害藻類ブルームが発生し、日光が十分に当たらなくなり海藻が枯れたことが一因だとみられる。

 FWCは3月、「異例の大量死発生」を緊急事態と認定。これにより、連邦政府の資金による調査が可能となった。

 映像は治療中のマナティー。4月18、19日撮影。(c)AFP/Leila MACOR