【5月16日 AFP】73歳の双子の兄弟オラさんとポントゥスさんは、新型コロナウイルスの流行により互いの家を訪れることができなくなってしまった。2人が毎週土曜日に、ノルウェーとスウェーデンの国境を隔てる橋の上で顔を合わせるようになって、もう1年以上になる。

 スウェーデン人のオラさんとポントゥスさんは、折り畳み椅子と魔法瓶、サンドイッチをそれぞれ持参して、雨にも吹雪にも猛暑にも負けず、週1回の再会を祝い続けている。2人の背後では、橋に掲げられた両国の旗がひらひら揺れている。

「国境を越えることは許されていない。どちらも(国境から)1メートル離れていなくてはならない」と、オラさんは説明した。「つまり、2メートルの間隔を空けなくちゃいけないってことだ」と言うなり、ガタガタと椅子を動かした。少し接近しすぎていたことに気づいたためだ。

 4月20日生まれの2人は昨年、フィヨルドの上に架かるスビネスンド橋(Svinesund Bridge)の上で72歳の誕生日を迎え、今年も共に73歳の誕生日を祝った。

 元看護助手で今は劇場の舞台装置制作に携わるオラさんと、芸術家でアマチュア鳥類学者のポントゥスさんは、ちょっとした地元の有名人だ。2人の写真を撮るためだけに、車で5時間かけてやって来る人もいる。

 そんな2人は、たまに善意の「密輸」に手を染めることもある。中でも、スウェーデンで生まれた子犬をノルウェーの新しい家族の元に届けたことは、一番の思い出だそうだ。

 この1年余りで、2人が会えなかった週末は3回だけだ。頑固な警察官が、橋の上に通してくれなかったためだった。

 離婚して独り暮らしのポントゥスさんは、オラさんとの週1回の待ち合わせを「とても大事だ。これがなかったら、うつになっていただろう」と語る。ハグを交わしたいかと問われると、笑いながら「もちろん」と答え、こう続けた。

「だから時々、自分をぎゅっと抱き締めるんだ。私たちは一卵性双生児だからね」 (c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES