【5月8日 AFP】2019年8月にフォーミュラ2(F2、FIA F2選手権)で発生した高速クラッシュで重傷を負った米国人ドライバーのファン・マヌエル・コレア(Juan Manuel Correa)は、友人だったフランス人ドライバーのアントワーヌ・ユベール(Anthoine Hubert)選手が命を落としたこの事故から1年8か月ぶりにレースに復帰することについて、「勇敢というよりも正気じゃない」と考えている。

 エクアドル生まれで現在21歳のコレアは、2019年8月31日にベルギーのスパ・フランコルシャン(Spa-Francorchamps)で起きたクラッシュで身体的にも精神的にも大きな打撃を受けた。ユベール選手が死亡したこの事故は、コレア自身にとっても取り返しのつかないものとなった。

 スペイン・バルセロナで8日に決勝が行われるフォーミュラ3(F3、FIA F3選手権)のレースで復帰するのを前に、AFPの取材に応じたコレアは、「(事故が)これからの自分をはっきりさせるだろうし、これまでの自分が誰なのかをはっきりさせてきた」と率直に話した。

「自分がいつも話しているのは、あの事故の前にはファン・マヌエル・コレアがいたし、事故の後もずっとファン・マヌエル・コレアがいるということだ」

 コレアは制御を失った自身のマシンがユベール選手と衝突した悲劇の事故に関して、自分の役割と折り合いをつける必要があったといい、「自分の手が血まみれになった感じがした。人生でそんな気持ちになるなんて考えてもいなかったけれど、自分に罪があると感じるところまではいかなかった」と明かした。

「自分の友人を殺してしまった。誰の責任でもないがそれが起きてしまったという感じで、とにかくショックだった。本当に身の毛がよだつような感覚だった」

 コレアは重度の脚の骨折で17時間の手術を受けた後、2週間以上にわたり人工的な昏睡(こんすい)状態に置かれていた。その後は長期間のリハビリと「極度の痛み」で精神的に「暗闇と深い穴」に落ち込みながら、F1でドライブするという夢に向かって前進し続けてきたという。

 そのときのことを振り返ったコレアは、「自殺願望は一度も起きなかったけれど、生きているのが本当につらかった」と告白。復帰については「勇敢というよりも、正気じゃないという感覚だ」と話し、ある意味で自分が救われるにはそうなることが必要だったと打ち明けた。

 そして、まだ自分が抱き続けている夢を実現させたいと話し、「それは可能だと分かっている。F1に行くことがかなわないとしても、それは自分の身体的限界のせいでないことは確実だ」と強調した。(c)AFP/Raphaelle PELTIER