【5月9日 東方新報】金の装飾品と投資需要で世界屈指のシェアを誇る中国で、金の「爆買い」が復活している。中国黄金協会によると、今年第1四半期(1~3月)の金消費量は288.2トンに達し、コロナ禍の直撃を受けた前年同期と比べると93.9ポイント増とほぼ倍増。2019年の同時期の水準にまで回復した。

 有力産金業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold CouncilWGC)の「世界金需要報告」によると、第1四半期の金需要は前年同期比23ポイント減の815.7トンに落ち込み、第1四半期としては2008年以来の低水準にとどまっている。それだけに中国の金消費量の回復ぶりは突出している。

 金が世界的に高騰した2020年は中国でも金1グラムが600元(約1万円)と高値だったが、最近は460~475元(約7768~8021円)で推移。中国では新型コロナウイルスを克服して国内経済が回復しており、金宝飾品の購入や投資用の金購入が活発になり、工業用金の需要も増加した。金宝飾品の消費量は前年同期比83.8ポイント増の169.1トン、金地金・金貨の消費量は155.6ポイント増の96.3トン、工業用・その他の金の消費量は20ポイント増の22.7トンと軒並み増加した。

「渋み」を好む日本人と対照的に中国人は「派手」を好む。中国の高級バーやカラオケ店で室内の装飾が金色に覆われていることも珍しくない。歴史的に見れば、王朝が誕生しては滅ぶ歴史を繰り返してきた中国において、金は不変かつ普遍的な価値を持つ通貨ともいえる。現在の社会主義国家・中国においてギャンブルはご法度だが、中国人の気質はギャンブル好き。コツコツと貯金するより、貯金や年金の大半を金や株につぎ込む市民も少なくない。2013年4月に国際金相場が暴落した際、ここが底値と見込んだ「中国大媽(中国のおばさん)」と呼ばれる中高年層の女性たちが、わずか10日間で計1000億元(約1兆6888億円)相当の金300トンを購入。米連邦準備制度理事会(FRB)の意を受けて米ウォール街(Wall Street)が空売りした金を買い上げ、「中国のおばさんがウォール街に勝った」と話題になった。

 国民の金好きと同時に、中国政府の思惑もある。中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)は米国債を売る代わりに金を大量購入している。「新冷戦」といわれるほど米国との対立が続く中、ドル資産を減らし安全資産の金を増やそうとしている。あまり知られていないが中国は2007年以降、世界最大の金生産国だ。国内で産出した金の多くも人民銀行が買い取っている。

 金備蓄量ランキングで中国は米国、ドイツ、イタリア、フランス、ロシアに続く6位だが、2019年段階で中国の金保有量は1937トンで、外貨準備に占める割合はわずか3%にとどまる。今後も「脱米ドル」政策として金の需要は高まりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News