【5月7日 AFP】米政府が新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄を提案したことを受け、国際社会でも6日、これを支持する声が高まった。一方で米ファイザー(Pfizer)などの製薬各社は、ワクチン供給不足の解消にはつながらないと反発している。

 欧米諸国では新型ウイルス流行に伴う制限措置の緩和が進む一方、途上国では感染者が急増し、ワクチン接種も進んでいない。こうした状況下で、富裕国はワクチンを囲い込んでいるという批判に直面している。

 ワクチン製造元の保護緩和を求める圧力が強まる中、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ(Katherine Tai)代表は5日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに対する保護措置の放棄を支持する」との米国の方針を発表した。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は、米政府の発表を「新型コロナウイルス感染症との闘いにおいて記念碑的瞬間」と称賛。アフリカ連合(African Union)の保健衛生機関も「素晴らしいリーダーシップの表れ」と歓迎した。

 欧州委員会(European Commission)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は最近、特許を放棄することに消極的な姿勢を示していたが、6日の会見では、米政府の提案について協議する用意があると述べた。

 だが、ワクチン開発大手ビオンテック(BioNTech)を擁するドイツは、米国の呼び掛けに全面的に反対。独政府報道官は「知的財産保護はイノベーションの源泉であり、今後もそうであり続けなければならない」と述べた。

 一方で、フランス、イタリア、オーストリアなどの各国政府や、世界貿易機関(WTO)のヌゴジ・オコンジョイウェアラ(Ngozi Okonjo-Iweala)事務局長は、米国の提案に強く賛同。ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領も、特許放棄を支持すると述べた。

 特許放棄の支持派は、特許の制限緩和により低コストのジェネリックワクチン生産が進み、ワクチン普及に苦慮する途上国を支援できると主張。反対派は、製薬会社の新治療法開発に対するインセンティブが損なわれかねないと反論している。

 ファイザーのアルバート・ブーラ(Albert Bourla)最高経営責任者(CEO)は、増産を阻む主な要因は特許ではないと強調。AFPに対し「問題は、自社で建設可能な施設以外に、世界に(ワクチンを生産できる)施設がないことだ」と述べ、「政治的動機による発表」を非難した。(c)AFP