■援助を求める叫び

 アヤウアルテンパ村のスポーツセンターで最近行われた戦闘訓練には、6歳から12歳までの子ども約30人が参加。その後、模型ライフルや木の棒を握り、サンチェス氏の先導で村を練り歩いた。

「親を亡くした子どもに永遠なれ!! 住む場所を奪われた同志に永遠なれ! 亡くなった兄弟に永遠なれ!」。サンチェス氏が、小型トラックからシュプレヒコールを上げ、その後ろに、ライフルや銃をかざした自警団の成人メンバーが続く。

 自警団は昨年も同じように村を行進した。狙いは、左派のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領の気を引くことにあったが、同氏は「(国の)恥だ」と一蹴した。

 だが、村民は、この行進は暴力の犠牲者と教育への援助を求める叫びだと主張する。

「大統領に、私たちの地域を見に来てほしい」とサンチェス氏は訴える。

 ロペスオブラドール大統領は、暴力と貧困の原因は歴代政権で汚職がはびこってきたことにあると指摘。社会事業への投資で解決を図ると訴え、2020年の投資額は140億ドル(約1兆5000万円)を超えた。

 一方、サンチェス氏は、子どもたちを巻き込んだ行進は当局の関心を引くためであることを認めつつも、子どもたちの訓練は犯罪組織から身を守るために欠かせないと主張する。

 通学を諦めたルイスさん(13)は、村をパトロールしたり、両親の畑仕事を手伝ったりしている。

「親から、もう勉強しなくていいって言われた。(麻薬カルテルに)誘拐されるからって」とルイスさん。「他にどうしようもない」

 ルイスさんは「上手に撃つ」ことに集中している。一方、チャヨさんは、何があろうと覚悟している。「必要なら、大切な人や家族のために命をささげてもいい」と話した。

 映像は4月10日撮影。(c)AFP/Yussel GONZALEZ