【5月6日 CGTN Japanese】今月4日、中国南西部にある重慶市(Chongqing)の繁華街、磁器口では、どの店も多くの観光客でにぎわっていました。こうした中で、「吆喝師(呼び売り人)」という新しい職業が生まれました。店の前に立ち、声を張り上げて叫ぶのが日々の仕事。その掛け声は、石畳の道と青い瓦の上に響き、古い街の風物詩の一つとなっています。

 肌が真っ黒に日焼けした唐小剛(Tang Xiaogang)さん(37)は、老舗食品店の店頭に立ち、元気いっぱい大声を出して客を呼び込みます。「いらっしゃい!こちらへどうぞ!手作りのもち。作りたてで、おいしいけど高くないですよ」。唐さんの掛け声は魔力があるようです。一、二度聞いただけで、そのメロディーとリズムがずっと頭に響き、消えません。

 唐さんの掛け声を軽く見てはいけません。武術を習っていたことがあるそうで、その抑揚のある掛け声は丹田(下腹の内部にあり、気力が集まるとされる所)から発せられ、遠くにいても聞こえます。唐さんは1時間に50回以上も掛け声を上げます。客の人数が多ければ、回数を増やします。仕事が終わると、何も言いたくなくなるそうで、喉を守るためにいつもできるだけたくさんお湯を飲み、たくさん野菜を食べ、毎日少なくとも20杯の水を飲むそうです。

 スピーカーを使えばいいじゃないかと言う人もいますが、「人の掛け声は、みんなと目や表情のやりとりができ、感情を伝えることができる」とのことです。

 唐さんの心配事は、多くの中年男性と同じように、二人いる息子に良い教育を受けさせることです。一家の大黒柱として、家族のために頑張らなければなりません。磁器口での呼び売りの仕事のおかげで、長寿区内にマンションを購入してその頭金を支払い、車も購入できました。暮らしは日々、理想的な状態に近づいています。申し訳ないと思うのは、家族と一緒にいる時間が少ないことです。毎日早く出掛けて夜遅く帰る唐さんにとって、帰宅して二人の子どもを抱っこするのが一番の楽しみです。(c)CGTN Japanese/AFPBB News