■文化のある埋葬

 アフリカはホモ・サピエンスが出現した地であるものの、欧州や中東と比べて、埋葬の儀式についてほとんど分かっていない。欧州や中東では、12万年前のものとされるイスラエルの例など、より古い時代の埋葬地が発掘されている。

 膝を抱えた姿勢で埋葬される理由について、先のマルティノン・トレス氏は「遺体を狭い空間に収めるための合理的な理由だと論じる研究者もいますが、子どもが眠る姿勢にしたものだとも考えられます」と言う。

 そして、「胎児の姿勢で横たわり、包まれていることは、(中略)人間の温かさを伝える何かしらの形である可能性があります」と述べている。

 石器時代の埋葬地には文化の発現が示唆されていることが少なくない、と英ロンドンの自然史博物館(Natural History Museum)人類進化研究センター(Centre for Human Evolutio)で研究員を務めるルイーズ・ハンフリー(Louise Humphrey)氏は指摘する。

 同氏は「ネイチャー」の論評で、「そうした行為には、墓の中に望ましい姿勢や向きで遺体を丁寧に安置すること、移送目的以外の理由で包んだり縛ったりすること、または意図的に貴重品を墓内に入れることなどが挙げられる」と述べている。

 この三つの判断基準のうち、ムトトの墓には最初の二つが該当する。3番目も当てはまる可能性がある。

 同氏によると、ムトトの墓は、南アフリカにあるほぼ同時代の子どもの埋葬地とともに、「中石器時代後期のアフリカの一部では、少なくとも非常に幼い子どもに対して、象徴的な意味のある埋葬を行う伝統が存在したことを示唆している」という。(c)AFP/Marlowe HOOD