【5月1日 AFP】ミャンマーの競泳選手が、軍事政権への抗議として、東京五輪出場の夢を断念したと表明した。出場すれば現体制の「プロパガンダ」になると話している。

 母国のトップスイマーであるウィン・テット・ウー(Win Htet Oo)選手(26)は、先月フェイスブック(Facebook)で「現状のミャンマー五輪委員会(MOC)を受け入れれば、殺人的な政権の正統性を認めることになる」と書き込み、もはや東京に行くことに関心はないと明かした。

「同胞の血で染まった旗の下で、(開会式の)入場行進に参加するつもりはない」

 2月1日に国軍がクーデターでアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問を拘束して以来、ミャンマーでは多くの市民が民主主義への復帰を求める抗議デモを行っており、混乱が続いている。治安部隊は武力弾圧し、人権監視団体によると、反クーデターデモの死者は750人以上だとされている。

 現在オーストラリア・メルボルンに滞在している同選手は、AFPの取材に対して、母国の五輪代表チームに背いたのは不服従運動に参加する自分なりのやり方だとして、「アスリートも市民の不服従運動に参加できるということをミャンマーの人々に示したかった」と訴えた。

 さらに、不満げにため息をつきながら「国際オリンピック委員会(IOC)や人々に、MOCが正当な五輪委員会ではなく、五輪の価値を傷つけていることを知らしめたい」と語った。3月にはIOCに書簡を送り、ミャンマーで起きている暴力の現状に言及しつつ、個人資格で五輪に出場することを求めたと言うが、訴えは認められなかった。

 ウィン・テット・ウー選手は2019年の東南アジア競技大会(Southeast Asian Games)で50メートル自由形の派遣記録をマークし、東京五輪への道が開けていた。五輪の出場資格は国際水泳連盟(FINA)の予選システムを通して与えられるが、IOCは同選手は五輪出場の資格を得ていないとの認識を示している。

 トレーニング強化のため2017年にメルボルンに移住していたウィン・テット・ウー選手は、子どものときから五輪で泳ぐことが大きな目標だったが、出場を諦めたことについては、「何の後悔もない」と話している。

「五輪に行くことは一個人の夢にすぎない。しかし、ミャンマーでは、多くの若者が自分たちの夢や大志が消えるのを目の当たりにしている」 (c)AFP/Dene-Hern CHEN in Bangkok