【5月1日 People’s Daily】美しく優雅な姿で、「愛の鳥」「幸福の鳥」とも言われるトキ。20世紀半ばから環境破壊により生息数は減少し、極東ロシアや東アジアで絶滅の危機にさらされた。そんな中、中国では1981年に陝西省(Shaanxi)漢中市(Hanzhong)洋県で7羽の野生のトキが見つかり、関係者の努力により、40年の時を経た現在は5000羽以上にまで増えた。

 中国野生動物保護協会の郭立新(Guo Lixin)副事務局長は「トキの保護は中国における生物多様性の取り組みの成功例であり、エコロジー社会建設の一つの縮図といえる」と意義を語る。その成功は、専門家やボランティアのたゆまぬ努力がもたらしたものだった。

 中国科学院動物研究所の鳥類学者、劉蔭増(Liu Yinzeng)氏は1981年、調査チームと共に各地を巡回する中、ついに陝西省洋県で7羽の野生のトキを発見した。そのニュースは世界を駆け巡ったが、次のステップはトキをどのように保護し、繁殖させるかという問題を解決することだった。

 劉蔭増氏は洋県林業局の若い職員4人を率い、住民が使わなくなった建物を利用してトキの保護基地「秦嶺1号」を造った。トキの見守り、エサやり、緊急時の救助などの経験を積み重ねていった。

 1981年から1990年にかけ、陝西省宝鶏市(Baoji)姚家溝村で、10か所の巣でトキの繁殖に成功。30個の卵を産み、20個がふ化し、19羽が成長した。1985年には「華華(Hua Hua)」と名付けたトキが日本に貸与された。その後、中国は繁殖用のトキ14羽を送り、日本と韓国のトキは1000羽近くになっている。

 劉蔭増氏はここ数年、国際フォーラムや公共活動に参加し、多くの人々にトキの保護活動への参加を呼びかけている。「トキは美しくシンボル的な存在で、人と触れあいを必要とする特別な鳥です。トキの保護は文化的、歴史的な活動であるという認識に立ち、市民が率先してトキの保護者の役割を果たしてほしい」と願う。

 洋県草壩村の農民、華英(Hua Ying)さんもトキの保護にかかわる1人だ。草壩村はトキのエサ場があり、重要な繁殖地。20年前、華英さんの家から10メートル足らずの場所で2羽のトキが営巣し、トキとのつながりが始まった。

「毎朝のトキの鳴き声が、子どもたちが学校に行く時間の合図でした。私が農作業をしていると近くにトキが現れ、どんどん愛着を感じるようになりました」と華英さん。木の枝の巣にいるヒナがヘビに狙われているのを見つけた時は、木の幹にプラスチックのフィルムを巻き、ヘビが登れないようにした。2006年に誕生した「洋県トキ愛鳥協会」の会長も務めている。

 人と鳥の間では常に調和が保たれているわけではなく、対立もあった。1980年代、トキを保護するため洋県では農薬の使用が制限された。当初は不満を持つ農民も少なくなったが、害虫をおびき寄せる誘虫灯を使って駆除する方法を考案。洋県の農産物は「トキのオーガニック産品」というブランドに発展し、ブランドの評価額は93億元(約1560億円)を超えている。

 7羽から5000羽へ、「幻の鳥」から里山を羽ばたく鳥へ。中国のトキ保護の取り組みは絶滅危惧種の動物保護のモデルとして国際的に認められている。(c)People’s Daily/AFPBB News