【5月1日 AFP】三味線職人の河野公昭(Kimiaki Kono)氏(62)は、東京五輪を機に三味線の愛好者が増えることに期待を寄せていたが、新型コロナウイルスの影響で状況は厳しいものとなっている。

 河野氏は都内の三味線工房で、AFPの取材に応じた。歌舞伎などの日本の伝統芸能に用いられる三味線について、世界中の人々に知ってほしいと言う。

「オリンピック・パラリンピックを通じて日本に観戦に来ていただける方たちの数というのは未知数でしたよね。その方たちに一同に三味線、日本の楽器を知っていただく、本当に願ってもない機会だったと思う」と河野氏。

 そのため、海外観客の受け入れ断念という決定は「非常に残念」だったと語る。

 だが、河野氏は自身が手掛ける三味線が、東京五輪の大会公式商品としてオンライン販売されることで、海外のファンに興味を持ってもらえることに望みをかけている。

 この取り組みは、Tシャツやうちわ、かわいらしいマスコットなどを大会公式商品として扱う東京五輪のマーケティング活動の一環だ。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)は先月、全国47都道府県の伝統工芸品からなる大会公式商品を発表。秋田県の樺(かば)細工のブローチや、富山県の高岡銅器の風鈴、河野氏の手掛ける東京三味線などの104点が披露された。

 三味線には伝統的に猫や犬の皮が張られ、弦を支える駒には象牙、ばちにはべっ甲が用いられてきた。

 だが河野氏によると、現在ではこれらの素材はあまり用いられていない。河野氏が手掛ける小じゃみせんでは、動物の皮の代わりに紙を使用している。

 河野氏は、東京五輪は自分たちが思い描いてきたのとは違うものになってきているが、三味線という音楽文化の魅力を世界に発信する努力は続けていきたいと語った。

 映像は4月12、15日撮影。(c)AFP/Harumi OZAWA