【5月1日 AFP】72歳のボディービルダー、A・アロキアサミ(A. Arokiasamy)さんは、マレーシアで経営する質素なジムの古びた器具でワークアウトを続けている。ダンベルを上げ、次いで筋骨隆々ではちきれそうな腕を曲げてポーズを決めた。

 高齢をものともせず、日課のベンチプレスを怠らない。精力的なトレーニング習慣を維持して健康を保つことが、新型コロナウイルスに対する最大の防御になると考えている。

 7人の子どもと5人の孫がいるアロキアサミさんはAFPに「ウエートリフティングとエクササイズで、老化を遅らせ、健康でいられる」と語る。

「命に関わる新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)がわれわれを脅かしている──ウエートリフティングをして健康を維持すれば、闘うことができる」

 アロキアサミさんは、貧しかった家族を支えるために11歳で学校を辞めて働いた。その間、ホッケーやバドミントン、サッカーとさまざまなスポーツを試したが、チームにはどれもなじめなかった。だが、仕事でまき割りをしていて筋力がつき、ジムに通ってボディービルに挑戦しようと決めた。

 マレーシア代表としてミスター・ユニバース(Mr Universe)に何度も出場したほか、フィリピンで開催された1981年の東南アジア競技大会(SEA Games)で優勝もした。

 一方、アスリートとして成功した後も生活費を稼ぐために学校の庭師の仕事を続け、今も警備員として働いている。

 元ミスター・ユニバースで映画スターのアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)さんが自分の英雄だと言うアロキアサミさん。若きボディービルダーたちのためにウエートリフティングの指導を始め、故郷のトゥルッインタン(Teluk Intan)で自分のジムを開いた。

 自宅の隣にあるジムは、一般の人々に開かれている。1日の使用料金はわずか1ドル(約107円)相当だ。

 室内には使いこんだ重りやダンベルをはじめ、さまざまな器具が並ぶ。金属くずから作られたものもある。ジムは常に盛況で、男性たちがアロキアサミさんのアドバイスを受けながら重りを持ち上げている。

 輝かしい勝利を収めたアロキアサミさんだが、悔しく思っていることがある。中でも最も残念なのは「アーノルド(シュワルツェネッガーさん)に会えていないことと、5回挑戦したミスター・ユニバースで決勝に進出できなかったこと」だ。

 映像は3月に取材したもの。(c)AFP/M. Jegathesan