【5月8日 AFP】メキシコ・ゲレロ(Guerrero)州アヤウアルテンパ(Ayahualtempa)村。木製の模造ライフルを持った子どもたちが、武装した自警団の大人のメンバーたちと一緒に練り歩いていた。村民は、麻薬組織が殺人や誘拐を繰り返しているにもかかわらず、当局は自分たちを見殺しにして何も手を打ってくれないと憤る。

 豆やトウモロコシ栽培で生計を立てている農家が集まるこの村は、アヘンの一大生産地帯にある。村の乗っ取りをたくらむ麻薬カルテル「ロス・アルディジョス(Los Ardillos)」に殺害された村民は、2019年から少なくとも9人に上っている。

「政府の役人がここに来て支援を約束してから15か月たつのに、まだ何の助けもない」と自衛団のリーダー、ベルナルディノ・サンチェス(Bernardino Sanchez)氏は言う。

 チャヨさん(17)は2年前に自警団に加わった。

「ロス・アルディジョスは僕の大切な家族を誘拐した。丸腰で外を歩くと、やつらに誘拐される」とライフルを肩に掛けて語った。「学校に行くと、やつらに連れ去られる。だから、子どもは勉強もできない」

 メキシコ政府が麻薬カルテル撲滅に軍を動員した2006年以降、全国で30万人以上が殺害されている。

 メキシコ南部太平洋岸のゲレロは、アヘンやマリフアナ(大麻)の取引をめぐる犯罪組織間の抗争で治安が最も悪化している州の一つだ。昨年の全国の殺人件数が3万4552件だったのに対し、同州は1434件だった。

 リゾート地として有名なアカプルコ(Acapulco)もあるが、山岳地帯は貧困率が非常に高く、人口のおよそ3分の2が貧困状態にある。1990年代からは、犯罪組織絡みの暴力行為を受け、州内で自警団の結成が相次いだ。