【4月30日 東方新報】中国で600匹以上のウミガメが違法に売買された事件が摘発され、保護したウミガメを海に戻す取り組みが進んでいる。ウミガメは全国30都市の水族館20か所と70人の個人に密売されていた。

 発端は2019年3月、「黒社会」と呼ばれる犯罪組織の捜査をしていた江蘇省(Jiangsu)徐州市(Xuzhou)の警察が、組織のボスの拠点に乗り込んだ際、ウミガメを発見したことだった。100平方メートルの広さの部屋の中央にあった2メートルの水槽で、体長57センチのメスのウミガメが泳いでいた。警察は関連部門と共に合同捜査を開始。中国南部の海南島(Hainan)の水産物販売会社にたどり着いた。隠し倉庫からは生きたウミガメ2匹と標本、関係書類を発見。納品書にはウミガメを「ビッグフィッシュ」と記入し、タイマイを「1号」、アオウミガメを「2号」と呼んで密売していた。この会社は、地元漁師が漁の最中に捕獲したウミガメを購入しており、時にはベトナムに出向いてカップ麺1箱とウミガメを交換していたという。

 ウミガメは200元(約3319円)から数千元で密売。ウミガメが届いてから7日以内に死んだ場合、別のカメを提供する「7日間保証」ルールも作っていた。

 タイマイは背中の半透明の甲羅が美しく、べっ甲は装飾品として人気がある。風水ではべっ甲は富を呼び込む効果や魔よけになると言われている。

 個人でウミガメを買った黒竜江省(Heilongjiang)ハルビン市(Harbin)の男性は「母親が胃に腫瘍があり、命が助かるよう魔よけのためタイマイを買った」と説明。北京の女性は「海の生き物が大好き」という理由で購入し、ウミガメが没収された後も警察に「カメの健康状態はどうでしょうか」と問い合わせてきた。

 驚いたのは、全国各地の水族館がこの闇ルートを使ってウミガメを入手していたことだった。ある水族館の経営者は警察に「ウミガメがいない水族館は魂がないのと同じ」と語った。ウミガメの個体数は乱獲で減少が続き、中国では「国家重点野生生物保護1種」に指定している。中でもタイマイは国際自然保護連合(IUCN)から「絶滅危惧種」に位置付けられている。それだけ入手が困難なため、闇ルートに手を出す水族館が多かった。しかし、経費節約のためウミガメに最適な28度より低い25度に水温を調整し、海塩の量を減らすという粗悪な環境の水族館もあった。

 警察はこれまでに368匹のウミガメを保護し、このうち268匹は海南島の熱帯海洋救助・保護センターに移送された。えさを取るなど野生の習慣を取り戻させた後に海へ帰しており、今年3月25日には160匹のウミガメを海に放たれた。

 一連の密売事件では約80人が摘発され、まだ見つかっていないウミガメの捜索が続いている。(c)東方新報/AFPBB News