【4月24日 東方新報】中国で長く問題になっている幼い子どもの誘拐問題。今年に入り、全国の警察が行方不明の子どもを探して親の元へ帰す「再会作戦」を展開している。

「お父さん、心配かけたね」「おまえが戻ってきたら、それだけで十分だよ…」──広州市(Guangzhou)で間もなく70歳になる李さんが、28年ぶりに娘と再会を果たし、涙を流した。

 貴州省(Guizhou)安順市(Anshun)に住んでいた李さん一家に悲劇が訪れたのは1993年10月。5歳の娘が弟と一緒に遊んでいたが、家には弟しか戻ってこなかった。李さん夫婦は、娘が3~4歳の時に撮影したモノクロ写真を片手に、浙江省(Zhejiang)、雲南省(Yunnan)、河北省(Hebei)、江蘇省(Jiangsu)などを探し回ったが、手掛かりは得られなかった。

 転機は今年3月。30代の女性、劉さんが広州市の警察署に「私は5歳で誘拐されて売られ、ずっと養父母に育てられた。私の本当の親を探してほしい」と訪れた。2年前に養母が亡くなる際、「あなたは本当の子どもではない」と告げられた。劉さんは養父母に優しく育てられたが、自分も子どもを産んで母親になると、本当の肉親に会いたい感情が高まり、警察署を訪れたという。

 DNA鑑定の結果、李さんと劉さんは親子と判明。劉さんの目尻には小さなこぶがあり、李さんは劉さんを一目見てすぐに娘と分かった。擦り切れた28年前の写真を見て、「よく似ている。やっと会えた」と涙をぬぐった。

 広州市公安局は今年に入り23人の誘拐された子どもを発見。李さん親子をはじめ、これまでに9組の家族が再会を果たしている。

 中国では子どもを誘拐する人身売買事件が後を絶たない。子どもに恵まれない夫婦や跡継ぎの男子がいない農家が買い求めることが多い。社会保障制度の整備が進まず、年金が少額で医療保険が不十分な農村部では、老後の不安のため子どもを求める家庭もある。連れ去られるのは物心がつくかどうかの3~5歳の子どもが多く、売買価格は10万元(約166万円)程度とされるが、借金をしても子どもを買う人が少なくない。また、地方で誘拐された子どもが大都市で物乞いをさせられるケースもある。

 子どもが遊んでいて、親がほんの少し目を離したすきに誘拐されるケースは多い。2015年末まで36年続いた一人っ子政策の影響のあり、たった一人の子どもが一瞬でいなくなった両親の悲しみや怒りは想像を絶する。中国のネットメディアでは「毎年20万人の子どもが行方不明」というセンセーショナルな報道もある。この数字は誇張とも言われるが、それほど各地で誘拐が相次いでいる状況を反映している。

 公安省は2009年から、全国の警察組織を連携させて児童誘拐事件に対応する特別作戦を展開。2016年には行方不明の子どもの情報を公開するプラットフォームを立ち上げた。DNAデータベースも作成し、これまでに幼少期に誘拐された約6600人を見つけ出している。

 公安省刑事局人身売買対策室の孟慶甜(Meng Qingtian)副室長は「長年、児童誘拐事件に取り組んできた経験から、愛する人が誘拐されて不幸な目に遭っている家族をたくさん見てきました。容疑者を摘発し、1組でも多くの家族を再開させるため全力を尽くしています」と話している。(c)東方新報/AFPBB News