3月26日にバーレーンで開幕した2021年のF1シーズン。ラストイヤーとなるホンダは、強豪メルセデスを相手にどんな闘いを見せるのか? F1ジャーナリストの世良耕太氏が見どころを解説。

2021年のF1シーズンが始まった。楽しみなのはF1ラストイヤーを迎えるホンダと、7年ぶりの日本人F1ドライバーとしてデビューを果たした角田裕毅の活躍だ。パワーユニット・サプライヤーとして15年にF1に復帰したホンダは、18年にマクラーレンからトロロッソ(現アルファタウリ)に供給先をスイッチすると、19年からはレッドブルをパートナーに加え2チーム体制で臨んでいる。

参戦当初は明らかに性能不足だったが、競合を上回る勢いで実力をつけ、実力がついたタイミングでレッドブルとタッグを組むことになった。19年に3勝を挙げると、20年にはアルファタウリの1勝を含めてホンダ勢として3勝を挙げた。さあ、いよいよシリーズ制覇だと意気込んだところでホンダは「21年シーズン限りで参戦を終了する」と発表した。「カーボンニュートラルの実現に向けた研究開発に集中して取り組んでいくため」というのが参戦終了の理由だ。

開発陣はこの発表を受け、新型コロナの影響で凍結していた新骨格パワーユニットの開発を、無理を押し通して復活させた。21年型のホンダRA621Hは、カムシャフトの位置を大きく下げると同時にバルブ挟み角を小さくし、燃焼室をコンパクトにして圧縮比を上げた。エンジンの熱効率を高めてパワーと燃費を向上させ、エネルギーマネジメントの自由度を高めるためだ。また、隣り合うシリンダー間の距離(ボアピッチ)を縮めてエンジン全体をさらにコンパクトにした。シリーズ制覇を期した意欲作である。

3月26日~28日に行われた開幕戦バーレーンGPでは、レッドブルのM・フェルスタッペンがポールポジションを獲得。レースではメルセデスAMGのL・ハミルトンに逆転を許して2位になったが、「惜しくも」と表現するにふさわしい接戦ぶりだった。レッドブル・ホンダがメルセデスに対する差を詰めたのは明らかで、今後の展開が楽しみになる。

F1開幕戦となるバーレーンGPで、メルセデスのルイス・ハミルトンと最後まで優勝争いを繰り広げたレッドブルのマックス・フェルスタッペン。最終的にハミルトンに0.7秒差での逆転を許して2位となったが、今後の展開に期待できる接戦だった。

楽しみはそれだけではない。ホンダのパワーユニットを積むアルファタウリからF1デビューを果たした角田裕毅の活躍も大いに期待できる。出走20台中の5台をふるい落とす開幕戦の予選1 回目では堂々2番手のタイムを記録。予選2回目は思いどおりにいかず13番手からのスタートになったが、レースでは随所でオーバーテイクを披露し9位でフィニッシュ。デビュー戦で見事に入賞してみせた。

しかし、F3、F2をそれぞれ1年で卒業し、モータースポーツのピラミッドを駆け足で頂点まで登り詰めた20歳のルーキーは、結果に満足していなかった。なにしろ、将来の目標は歴代最多タイとなる7度のチャンピオン経験を持つハミルトンを超えることだと、臆面もなく語るくらいなのだから。それが大言壮語に聞こえないほど、コース上では落ち着き払っており、思い切りがいい。末恐ろしい日本人ドライバーが出てきた。

9位入賞となったアルファタウリ・ホンダの角田裕毅。レース後のインタビューでは「50%ホッとした気持ちと、50%悔しい気持ちです」と語っていた。
ポールポジションを獲得したフェルスタッペンとの激戦を制したメルセデスのルイス・ハミルトン。チームメイトのバルテリ・ボッタスは3位に入ったが、ピットストップで大きくロスしたのが響いて首位争いに絡むことができなかった。

文=世良耕太 写真=本田技研工業、ダイムラー

(ENGINE2021年6月号)