【4月22日 People’s Daily】北京市板章胡同(フートン、北京の街を縦横に走る路地や横丁のこと)に入ると、両側の壁には生旦浄丑(京劇のあらゆる役柄を4文字で表したもの)の隈取(くまどり)が描かれ、いろいろな京劇の人物のデザインが刻まれ、各種京劇の衣装が描かれている。濃厚な京劇芸術の息吹が感じられる。ここは北京風雷京劇団の所在地だ。

 80年以上の歴史を持つ京劇団として、近年、伝統を受け継ぐ上で、同京劇団は京劇文化芸術の普及のため一連の探索や試みを行い、より多くの若者の注目を集め、京劇を好きになってもらうことができた。

 同京劇団が調査を行った結果、京劇を見に来た観客は中高年が中心で、25歳以下の若者は20%に満たないことが分かった。「若い観客の参加がなければ、未来の京劇は誰に見せる?」と、同京劇団の松岩(Song Yan)団長は心配そうに言った。若者の考えを理解するため、若者を招いて京劇に対する考え方を語ってもらうサロンを開催した。松さんが驚いたのは、多くの若者は京劇を嫌いというわけではないが、知らない、見ても意味が理解できないということだった。「自国の伝統文化鑑賞は事前に勉強しないといけない」という若者の言葉から、松さんは一気に疑問が解けた。

 京劇は芸術水準が高いため、鑑賞のハードルも高くなる。若い人に京劇を好きになってもらいたかったら、まず彼らにより多い機会を与えて京劇とふれあい、体験してもらわないといけない。そこで、松さんは同京劇団の劇場内に京劇文化芸術体験基地を建設することにした。見学者に没入型体験をするよう誘導することで、京劇文化芸術に対する理解を深めてもらう。見学に来た人は自分の手で京劇の隈取を描き、衣装を着て、プロの俳優の指導によって動きや節などを学ぶこともできる。

 また、同京劇団が連携している複数の学校は、小中学生を組織して見学に来る。現場解説、インタラクティブな体験を通じて京劇文化を理解してもらい、子供たちを自国の伝統文化に近付き、好きになってもらうようにする。

 今年の1月初め、国家大劇院(オペラハウス)で、「胡同のふたり」という新劇が5日間連続で上演された。入場券は連日完売で、人気を博した。劇での男性主人公を演じるのは松さん本人だ。

「体験基地を建てるのと同じで、異業である新劇の創作も京劇を広めるための方法の一つだ」と、松さんは述べた。「素人」に京劇を好きになってもらうのは難しいので、松さんは新劇のことを思い出した。松さんは、新劇を殻にして、京劇の美しさを示したい。新劇で京劇の発展を促進したいと話した。

 近年、京劇芸術の隔たりを打破するために、多くのバラエティー番組やアニメ作品などで京劇文化の若年化・大衆化した芸術表現が試みられている。京劇芸術に焦点を合わせ、梨園の伝奇を述べたドラマ「君、花海棠の紅にあらず」が放送され、現代の映画とドラマが京劇文化を伝承するための有益な探求の方法となった。京劇を見たことがない人たちは、このような新劇や映画・ドラマを見てから京劇に興味を持ち始めた。あるネットユーザーは、「ポップスだけがいいと思っていて、京劇など戯曲もこんなに素晴らしいとは思いもよらなかった。このような作品は若い人に京劇の美しさを発見させ、京劇に伝承させるチャンスを与えた」とコメントした。(c)People’s Daily/AFPBB News