写真=柏田芳敬

2021年版ENGINE大試乗会で、アメリカン・マッスルカー独特のオーラを放っていたシボレー・カマロSSに、国沢光宏、今尾直樹、佐藤久実、吉田由美、武田公実の5人のモータージャーナリストが試乗した。

2019年にマイナーチェンジを受けた6代目シボレー・カマロは、年次改良を続けて2021年モデルではクラウド・ストリーミング・ナビやスマートフォンのワイヤレス・チャージング機能を全グレードに標準装備した。試乗車のSSはローンチコントロール・スイッチを備える高性能版だ。6.2リッターV8は、最高出力453ps/5700rpm、最大トルク617Nm/4600rpmを発生し、10段ATを介して後輪を駆動する。ボディ・サイズは全長、全幅、全高が4785mm、1900mm、1345mmで、ホイールベースは2810mm。車重は1710kg。車両価格は710万円。アメリカンV8OHVの吠えっぷりを堪能した5人のジャーナリストの感想やいかに。

写真=神村聖

「人生最後の1台か!?」国沢光宏

カマロに乗る度、数日間は「買っちゃえよ!」という心の声と戦うことになってしまう。隠れアメ車ファンです。いかにもアメ車という派手な造作のコクピットに座りスタートの操作をすると、一瞬で6.2リッターV8が目覚める!

どれどれ、とばかりDレンジのままブレーキを踏んでアクセル開ける。いわゆる「ラインロック」ですね。するとどうよ!

1970年代のマッスルカーの如くリア・タイヤがホイールスピン。そのままだと煙幕状態!

よきタイミングでブレーキをリリースしてやれば、50m以上のブラック・マークを路面に残して豪華に加速していく。あまりイメージないかもしれないけれど、前245/40ZR20、後275/35ZR20という超ファットなタイヤと、ワイドなトレッドは高いコーナリング・スピードを発生する。カマロ、驚くほど曲がります。でも一番快適なのは、流れのよい道を80km/hくらいでV8のビートを響かせながらクルーズしている時。最後の1台はバンブルビーにしようかと真剣に悩んでます。

写真=神村聖
写真=神村聖

「振り回すには腕がいる」今尾直樹

ダッシュボードのスターター・ボタンを押した途端、雷鳴のようなサウンドを発してフロントの6.2リッターV8OHVが目覚める。どひゃー。フル加速してみたら、雷鳴のような爆裂音とともにモーレツに加速し、ブレーキが間に合わないかと一瞬思った。ドキドキ。不沈艦スタン・ハンセンのキャッチフレーズ「ブレーキが壊れたダンプカー」を思い出した。ウィーッ。最高出力453ps、最大トルク617NmのV8の大トルクはまさにウェスタン・ラリアット!

いまどきこんな怪物が存在しているのだから、世界は広い。意外なことに割と洗練されていることもまた確かで、V8OHVはときに半分お休みして燃費を稼ぎ、10段ATは100km/h巡航1500rpmの低回転を実現しつつ、レスポンスよく加速する。室内のミラーはデジタルだし、内装の質感も上々。マグネチック・ライドを備える乗り心地はドイツ製サルーンにも負けていない。しかして、これは大刀である。世界で最もお値打ちなV8のクーペだろうけれど、本気で振り回すには腕がいる。お気をつけください!

写真=茂呂幸正
写真=神村聖

「唯一無二の魅力がある」佐藤久実

うっわー、このワルそうな顔! 約40台のクルマがランダムに並ぶ中から担当のクルマを見つけて乗るのだが、カマロは、どこにいてもすぐに見つけられる。独特なスタイリングが放つオーラがハンパない、唯一無二の存在。そして近づくとこの人相ならぬ車相(?)でキッと睨みを利かせながら迎えられる。でも、乗ると排他的な感じはなくて、実はとってもいいヤツです。エンジンをかければアイドリングでドドドッと唸り、アクセルを踏んだ瞬間から、アメ車特有のドゥロンドゥロンしたサウンドで咆える咆える!

もう、わかりやすいキャラで、思わずニンマリ。カマロの世界観へとグイグイ引き込まれていく。10段ATってすごいね。全開加速するとお尻をプリプリさせながらも力強く進み、「トラックモード」にするとドリフト・コントロールも楽しめる。ドライブ・モードとスタビリトラックのスイッチが別になっているので、トラックモードでも安全装備に守られながら、ハイパワーFRスポーツの片鱗を楽しめるのも魅力。

写真=神村聖

「V8サウンド最高!」吉田由美

このコロナ禍で、これまで当たり前だったのに当たり前ではなくなってしまったことがいかに多いか改めて気づかされる今日この頃。ほぼ同時期に行われていた輸入車組合主催の一気乗り試乗会が中止となり、もしやエンジン大試乗会も……と思ったら、こちらは決行!

エンジン編集部の英断に感謝です。

そしてこの試乗会の試乗車リスト、いったい誰が考えるのかと思うぐらい絶妙な配車なのですが。今回の私の1台目はシボレー・カマロSS。うーん、“いかにもアメ車”的なマッチョなデザインに6.2リッターV8エンジン。試乗会会場を出てすぐの西湘バイパスで、速度が上がってきてエンジン音が変わる瞬間が最高~!

お陰で目が覚めました。ん?

でもよく考えたら去年の「エンジン大試乗会」でも試乗しているんですよね。ちなみにこの1年で大きく変わったのは、GPSがつながらなくても自立航法ができるカーナビ「クラウド・ストリーミング・ナビ」とワイヤレス・チャージングが追加に。それにしてもアメ車はやっぱり楽しいのよね~。

写真=神村聖

「アナログ派クルマ好きには感涙モノだ」武田公実

今回乗せていただいた5台の中で、筆者が勝手に定めたテーマに最も相応しいと感じたのが、2020年代にあっても旧き良きアメリカンV8の灯を護り続けているカマロSSだった。しかも、6.2リッターという「大排気量」に「OHV」。とどめは「自然吸気」という、筆者と同じくアナクロ派なクルマ好きにとっては感涙モノの単語が舞い踊るこのクルマは、まさしく「ドライビング・プレジャー発生マシン」だった。

昔ながらのV8らしい、猛々しい咆哮やトルクフィールは、今となっては蕩けてしまうほどに甘美。余計なCO2を排出してしまうと自戒しつつも、脳髄が痺れてしまうほどのサウンドに身を委ねたくなるのだ。

低負荷時にはV型4気筒に切り替わる可変気筒休止システムも採用して、現代の要求に応えようとする涙ぐましい努力も、すべてはこの伝統的フィールを延命させるため。これは、2035年までに全生産車を電動化するというGMの「スワンソング」なのだろう。

(ENGINE2021年4月号)