【4月23日 東方新報】中国で体重100キロを超えた19歳の少年が糖尿病の合併症や心筋梗塞を起こし、あわや命を落とす出来事があった。中国では生活が豊かになるにつれて肥満の割合が増えており、その反動で「糖分ゼロ」をうたう飲料の人気も高まっている。

 湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)に住む19歳の江くんはコーラを「水のように飲む」生活を続けていた。先月12日に急に吐き気や腰痛が出るようになり、2日後に症状が悪化して病院に運ばれた。江くんの血糖値は1リットルで86.6mmol(ミリモル)と通常の14倍に達し、血液のPH値は7.09(正常値は7.35~7.45)と重度の酸性であった。急性合併症の糖尿病性ケトアシドーシスに陥っていた。

 病院重症医療部の李剛(Li Gang)部長は、江くんに水分補給やインスリンの静脈投与、酵素・ブドウ糖などの措置を執った。「体重の10%分の水分を喪失しており、10リットル近い水分を補給した」という。

 江くんの容体がいったんは安定したが、2日後に急性心筋梗塞を発症。一時は意識不明となったが、心臓専門医が緊急冠状動脈手術を行い、一命を取り留めた。李剛部長は「10代の若者が急性心筋梗塞を発症することは珍しい。発見が早く患者に体力があったので助かった」と話す。江くんは先月20日から内分泌科に移り、長期的な血糖値改善プログラムに取り組んでいる。

 同じ武漢市では昨年9月、体重200キロの男性が減量手術を受けたことがニュースになった。

 33歳の林さんは身長が190センチあるが、炭酸飲料が大好きで間食も多く、3年前に体重が200キロに達した。昨年3月には呼吸不全に陥り、集中治療室(ICU)の治療で一命を取り留めた。脂肪肝や高血中コレステロール、重度の睡眠時無呼吸症候群などの合併症を発症していた。

 減量を決意した林さんだが運動や食事療法の効果は芳しくなく、武漢大学中央南病院に胃の切除手術を依頼。同病院の肥満・代謝外科センターの李震(Li Zhen)副院長は林さんに「私は手術後、炭酸飲料を飲む習慣をやめ、日常生活や食事で医師のアドバイスに従うことを約束します」という承諾書を書かせ、胃の切除を行った。

 中国で飲み物といえば伝統的にお茶だ。また、漢方では「冷たい飲み物は体に悪い」といわれてきた。しかし近年はライフスタイルの変化で若者を中心に、冷たい炭酸飲料をがぶ飲みするのも当たり前に。食事の西洋化や生活習慣の変化も相まって、中国の成人で過体重(BMI24以上)の割合は2020年で50.7%と半数を超えた。肥満(BMI28以上)の割合も、2002年の7.1%から2020年は16.4%と倍以上になった。

 そんな中、中国の飲料市場でいま大人気なのが「甘い糖分ゼロ」シリーズ。「糖質0、カロリー0、脂肪分0」のラベルが貼られた炭酸飲料がスーパーやコンビニに並び、健康志向が強い若者や肥満の人、糖尿病患者らがこぞって買っている。昨年以降、新型コロナウイルス感染症で「ステイホーム」を余儀なくされた時期もあり、糖分の取り過ぎに注意して糖分ゼロ飲料を選ぶ日とも多いようだ。

 ただ、医学界は「糖分ゼロ飲料は人工甘味料を使っているので、大量摂取は控えた方がいい。ラットの実験などで人工甘味料は体に有害な影響はないとされているが、何十年も飲み続けた場合の実験データはない」と注意を呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News