【4月22日 東方新報】中国ではインターネットの動画や生放送で注目を集める人を「網紅(ネットスター)」と呼ぶ。日本のユーチューバーに似ており高収入のスターも多いが、最近は幼い子どもの網紅が人気となっている。ただ、「親が子どものすねをかじっている」という批判があり、さらに児童虐待やポルノのような内容に問題があるケースも目立っている。

 子どもの動画は、かわいらしくそのあどけない姿や意外な能力を発揮する姿が魅力だ。包丁やコンロを使って1人で料理を作る3歳の女の子、巧みなギター演奏やダンスを披露する4歳の男の子など、「かわいい」「元気が出る」と多くの視聴者が訪れる。山東省(Shandong)の韓大鵬(Han Dapeng)さんは1年前から2人の娘のショートビデオを投稿。韓さんが作った台本に沿って子どもたちが演じる内容が人気となり、月収は15万元(約250万円)に達する。韓さんは「お金をどうやって使えばいいかわからない」とほくほく顔だ。

 米国では9歳の男の子、ライアン・カジ(Ryan Kaji)くんが年間30億円を稼ぎ、「世界一稼ぐユーチューバー」といわれている。中国でもこの話題は知られており、子どもを通してビッグマネーを得ようとする保護者が後を絶たない。そんな中で昨年半ば、中国で3歳の太った子どもの動画が騒動となった。両親は毎日、子どもにハンバーガーやフライドチキン、鍋料理など高カロリーの食事を食べさせている様子を動画で流し、3歳で体重が35キロに達した。子どもが嫌がるしぐさをしてもお構いなしに食事を与え、「もうじき50キロになる」と喜ぶ。視聴者数は増えるとともに「これは虐待だ」という批判が殺到したが、両親は「子どもはもともと太っていたし、家庭環境が恵まれているにすぎない。動画の投稿は金もうけのためではなく娯楽を提供しているだけ」と強弁した。最終的には動画を投稿するプラットフォーム会社がこの親子のアカウントをブロックした。

 このほかにも、6歳の息子にビールを飲ませたり、2歳の娘に2時間にわたり歌と踊りを練習させたり、さらには片脚のない4歳の娘が日常生活にとまどい、けがをする姿をそのまま流す動画もあった。また、子どもに大人のセクシーポーズをまねさせたり、露出度の高い服を着せたりするポルノまがいの動画もあった。

 こうした現状に「子どもの人権侵害」「親の監督権の乱用」という批判も多い。政策提言機関の中国人民政治協商会議では、「未成年者がネット上のホストを務めることを明確に法律で禁止すべきだ」という提案があり、「子どもの権利擁護や低俗なコンテンツの排除のため必要」という賛成意見と、「インターネットは現代の子どもの生活に浸透しており、年齢で一律に規制すべきではない」という反対意見に分かれた。

 国家インターネット情報弁公室は昨年7月、「未成年者が生放送のキャスターを務めることを厳しく禁止する」と通知。ただ、形式だけ親が生放送の責任者を務めたり、あくまで「子どものかわいい姿をビデオで投稿しただけ」という名目にしたりして、規制をすり抜けるパターンも多い。児童心理学者は「子どもを悪用した動画の投稿は、子どもの健全な成長を阻害する上、子どもが成長した時に心理的な悪影響を与える」と指摘。悪質な投稿をする保護者を罰するべきだと主張している。(c)東方新報/AFPBB News