写真=茂呂幸正

2021年版ENGINE輸入車大試乗会。注目の新型SUV、アストンマーティンDBXに斎藤慎輔、島下泰久、森口将之、渡辺慎太郎、桂伸一の5人のモータージャーナリストが試乗した。

メルセデスAMGの最新技術がてんこ盛り!

DBXはアストン・マーティン史上初のSUVで、フロントに搭載する4リッターV8ツイン・ターボは550psの最高出力と71.4kgmの最大トルクを発揮する。トランスミッションは9段AT。4駆システムはアクティブ・センター・デフ付きだ。これらのパワートレインやインフォテインメントなどは、メルセデスAMGの最新技術が投入されている。さらに、ハンドリングの味付けはロータスから移籍したマット・ベッカーが担当した。堂々としたサイズは、全長、全幅、全高が5039mm、1998mm、1680mmでホイールベースは3060mm。車重は2310kgもある。車両価格、2295万円(税込)の超プレミアムなSUVに試乗した5人のジャーナリストの意見やいかに!!

写真=柏田芳敬

「初のSUVでこの出来か!」斎藤慎輔

いまどき、どのメーカーがSUVを造ってきても驚きはしない……いや、もしフェラーリが造ってきたら驚く(そして少し悲しむ)だろうが、そう言えてしまうのはアストン・マーティンがDBXを送り出してきたからだ。

私の場合、この仕事をしていても、アストン・マーティンに乗る機会がそうそうあるわけではなく、まずはDBXの周りをざっと一周りして、ドアを開け閉めして、はあ、なるほど、うーん、すげえ、と唸るところから始まった。なにはともあれ、どこから見てもアストン・マーティンであるのは見事としかいいようがない。

違うのは、これまでとは桁違いともいうような実用性と使い勝手を得たこと。でありながら、身のこなしは3mを超えるホイールベースからは想像できないほどに俊敏かつ正確で、シャシー、ボディ、足はもちろんエンジン制御、前後左右の駆動制御の緻密さに至るまで、初のSUVでこの出来かとまた唸ることに。

スーパー・スポーツではなく衝撃が走ったのは久々で、もっと乗りたい知りたいと本気で思わされました。

写真=茂呂幸正
写真=茂呂幸正
写真=茂呂幸正

「これぞまさに快作!」島下泰久

まずはこのデザインの素晴らしさに触れておきたい。ホワイトのボディ色がこんなに艶かしく映えるクルマは他にはそうは無いだろう。インテリアの仕立ても、まさにアストン・マーティンならではの世界。大量生産品には出せない色香が漂う。

DBXは、その走りも艶めいている。4リッターツイン・ターボ・エンジンの右足の動きに即応するトルク感、粒の揃った回転フィーリング、そして胸のすくサウンドはまさに快感。フットワークも同様で、良く曲がるというだけでなくドライバーに寄り添った感覚が気持ちいい。特にコーナー立ち上がりのFRよろしくリアから蹴り出す感じなど、思わずニヤニヤさせられてしまう。

そう、その走りはまさにアストン・マーティン。けれども決して背の高いスポーツカーではなく、デザインや広さ、視界などには、SUVらしい豊かさ、道具感、ゆとりなどが絶妙にブレンドされているのがいい。要するに、ちゃんとアストン・マーティンで、ちゃんとSUV。これぞまさに快作である。

写真=茂呂幸正
写真=茂呂幸正

「上品でありながら蛮勇」森口将之

たいしたことないだろうと思っていた。所詮は流行商品だろうと。でも乗り込んだ瞬間、革の匂いに圧倒された。包み込まれるようなシートのシェイプはGTそのもの。他のSUVに似ていると勝手に想像していたスタイリングも、近づいてみると筋骨隆々としていて、胸板の厚いアングロサクソンを連想する。それでいてパワー・ウインドウをはじめ所作はすべて品良し。ジェントルマンでもある。少なくともポルシェやマセラティとは歴然と違っている。

上品でありながら蛮勇という独特の個性は音にも表れている。迫力だけを競うクルマとは違う地位にあることを教えられる。音色に誘われてワインディング・ロードに踏み入れると、思った以上に機敏に動く。モードをGTからスポーツに切り替えると足が引き締まり、これは乗用車じゃないんだと教えられる。それをSUVスタイルで嗜む。目立てば勝ちの方程式とは対極にある、アンダーステートメントの具現化ではないかと、好意さえ寄せるようになった。

写真=茂呂幸正

「カイエンよりジェントルマンだ!」渡辺慎太郎

試乗車の“ローズ・レッド”と呼ばれる本革の色合いがなんとも上品でやられた。もう少し明るいと下品になるだろうし、もう少し暗いと地味になりすぎるであろう絶妙なところを突いている。DBXというクルマはその乗り味に関しても絶妙なセッティングが施されていて、本格SUV/ラグジュアリー・セダン/スポーツカーのまったく別の方向を向いた3要素が見事なまでにうまくまとめられている。どれかひとつが勝ちすぎていたらきっとバランスが崩れてこのクルマの魅力は半減していたと思う。そしておそらくこのバランスがとれているポイントは針の穴のように小さく限定的で、そこに糸を通したのがアストン・マーティンの総料理長であるマット・ベッカーその人である。メルセデスからエンジンその他の供給を受けながらもアストン独自の世界観をきちんと確立させているのは彼の手腕があってこそといっても過言ではないだろう。ポルシェのカイエンといい勝負ができる唯一のSUVであり、でもカイエンよりもずっとジェントルマンである。

写真=神村聖

「SUVのカタチをしたスポーツカー」桂伸一

アストン・マーティン初の大型SUVは、アストンのすべてが凝縮されているといっても過言じゃない。いわばSUVのカタチをしたスポーツカーそのものだ。サルーンのラピードを上回る広さの室内は快適そのもの。そこにDB11のように俊敏なフットワークとハンドリングを持ちながら、高い全高にもかかわらずフラッともグラッともしないロール感。つまり不穏な傾きがない。さらに3m級のロング・ホイールベースが前後に沈み込むピッチングやスクォートの類を抑え込み、高い位置に座るSUVながらスポーツカーのように姿勢変化の少ないフラットな素晴らしい乗り味を実現。トルキーなV8と9段ATから低速域から高速域まで有り余るパワーを自由自在に絞り出せる。以前アストン・ワークスからニュル24時間レースに参加した関係で、旧知の技術者からDBXを開発中にウルスの見解を求められ、「アレをつくるべきだ」と伝えた。彼は笑みを浮かべ頷き、そしてDBXはスポーツカーとサルーンを融合したアストン流SUVとして仕上げられた。

(ENGINE 2021年4月号)