【5月11日 AFP】ブルートゥース(Bluetooth)は最も知られた現代テクノロジーの一つだが、「青い歯」を意味するその名とロゴは、バイキング時代に生きた北欧の王の虫歯に由来する。四半世紀前、2人の技術者がビールを飲み交わしながら思い付いた。

 1990年代末期、スウェーデンの通信機器メーカー、エリクソン(Ericsson)に勤めていたスウェーデン人エンジニアのスベン・マティソン(Sven Mattisson)氏と、米半導体大手インテル(Intel)で働いていた米国人のジム・カーダック(Jim Kardach)氏は、この革新的な技術の開発に携わっていた。

 技術は、1994年にまずエリクソンが開発を始めたが、1998年にはその世界統一規格を定めるために国際コンソーシアムが設立された。

 これに先立ち、マティソン氏とカーダック氏は、それぞれの無線通信技術の売り込みに苦闘していた。

 当時、インテルは「Biz-RF」、エリクソンは「MC-Link」、さらにフィンランドの通信機器大手ノキア(Nokia)は「Low Power-RF」と呼ぶ無線プログラムを持っていた。1997年末、2人を含む各社の技術者がカナダ・トロント市で開かれたセミナーでアイデアを出し合った。

「ジムと私は、自分たちの提案が歓迎されていないことについて語り合いました」と、マティソン氏はAFPとの最近のインタビューで振り返った。現在は65歳。エリクソンでのキャリアを締めくくりつつある。

 1時間余りのプレゼンテーションためにスウェーデンからはるばるカナダまで来ていたマティソン氏は、帰国する前夜、カーダック氏と一杯やることにした。

「われわれの入り組んだ提案に対する反応はいまひとつで、この時、誰もが使える同一のコード名がプロジェクトに必要だと気付いた」とカーダック氏は自身のウェブページで明かしている。

■「青歯王」の物語

 ふさいだ気分を晴らすため、2人はトロント市内のバーに向かい、最後はカーダック氏が熱中している歴史の話にふけった。

「ビールを何杯か飲んで(中略)ジムは歴史に興味を持っていて、私にバイキングのことを尋ねた。それから、じっくり話し込んだ」と、おぼろげな記憶をたどるマティソン氏。

 カーダック氏は、バイキングについて知っているのは「角の付いたかぶとをかぶって動き回り、いろんな場所を襲ったり略奪したりすること。クレージーな集団だったということだけだ」と答えた。

 そこで、マティソン氏がカーダック氏に読むよう勧めた本が、バイキングについて書かれたスウェーデンの有名な歴史小説「ロングシップ(The Long Ships)」だった。