【4月16日 AFP】ブラジル人のアントニオ・セナ(Antonio Sena)さん(36)は、軽飛行機でアマゾン(Amazon)熱帯雨林の上空を飛行中、突如エンジン停止に見舞われた。不時着できる場所を探す時間は数分しかなかった。無傷で生き延びることはできたものの、世界最大の密林のど真ん中で立ち往生する羽目となった。

 そして、38日間のトレッキングが始まった。セナさんはこの経験から、人生最大の教訓を得たと語る。

 セナさんはこのとき、ブラジル北部アレンケル(Alenquer)からアマゾンの違法金鉱に物資を輸送する仕事を請け負っていた。エンジンが停止したのは、高度約1000メートルの上空だった。

 どうにか谷間を見つけて不時着し、ガソリンまみれになりながら、役に立ちそうなものをかき集めて大急ぎで機内から脱出した。ほどなくして機体は爆発する。

 持ち出せたのは、バックパック一つにペットボトルの飲料水3本、清涼飲料水4本、パン1袋、ロープ数本、非常用キット、手提げランプ、ライター2本。1月28日の出来事だった。

 首都ブラジリアの自宅でAFPの取材に応じたセナさんは、遭難した日から5日目までは頭上を捜索隊の飛行機が飛ぶ音が聞こえたと語った。だが、生い茂った木々に阻まれて、見つけてもらうことはできなかった。それきりエンジン音を聞くことはなく、自分は死んだものとして捜索は打ち切られたのだと思い、打ちひしがれたという。

 セナさんは、携帯電話に残っていたバッテリーを使ってGPS(全地球測位システム)機能で現在地を確認すると、地図上に表示された2本の滑走路を目指して東へと歩き始めた。