【4月15日 AFP】2019年4月15日の夜、激しい炎に包まれるパリのノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)を、フランスをはじめ世界の人々は恐怖で身じろぎもせずに見守った。人類の歴史的遺産が永遠に失われるかもしれないという恐れだった。

 尖塔(せんとう)は崩れ落ち、屋根の大部分が破壊されたが、その晩の消防隊の必死の努力により、中世の偉大な建造物は生き残った。それでも再建への道のりは長く険しい。元の荘厳な姿が戻るのは、火災から5年後の2024年4月となる見込みだ。

 火災の原因については今も不明だが、捜査当局は犯罪ではなく漏電か、たばこの火の不始末に焦点を絞っている。

 火災直後に再建5か年計画を打ち出したのは、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領だ。2024年のパリ五輪開催を視野に入れた計画だ。

 マクロン氏から再建事業の責任者を任命されたジャンルイ・ジョルグラン(Jean-Louis Georgelin)元統合参謀総長は先月、「2024年の大聖堂の礼拝再開に向けて順調に進んでいる。だがまだ多くの仕事がある」と語った。

 実際の修復工事はまだ始まってさえいない。これまで時間が費やされてきたのは、築850年の建物の保全作業だ。これには火災で焼け付いた足場の部材4万個を取り除くという骨の折れる仕事が含まれている。

 目標は2024年4月15日に復元された大聖堂で、最初の聖歌隊付き礼拝を行うことだ。

■火災原因の究明

 再建の取り組みは、火災直後から国内外で開始された募金活動で集まった約8億3300万ユーロ(約1080億円)に支えられている。そのうち7000万ユーロ(約91億円)は海外からの寄付で、その約半分は米国からだ。

 すでに尖塔と翼廊の交差部の再建用に厳選されたオークの木、約1000本が乾燥中だ。

 数百人の専門家が大聖堂の復元を追求する一方で、捜査当局は火災原因の究明に取り組んでいる。関係筋がAFPに明らかにしたところでは調査段階は完了し、今後は何か月にもわたり火災現場から収集した全ての証拠の分析が行われる。

 大聖堂の警備の不備もいくつか確認されている。とりわけ警報システムの欠陥により消防隊への通知が遅れたことと、エレベーター1基の電気系統に問題があった点だ。わずか2か月の間に約100人が目撃者として聞き取り調査を受けた。