【4月7日 AFP】けがをし、家を失い、娘も失った──豪雨による洪水と土石流に見舞われたインドネシア・アドナラ(Adonara)島に住むスゲンさん(60)は、残された惨状をぼんやりと見つめる。

 インドネシア東部を豪雨が襲った4日夜、スゲンさんは家族と共に自宅で眠っていた。

 わずか数秒で、島民たちの人生は永遠に変わってしまった。

「突然『洪水だ!』と叫ぶ声が聞こえた」とスゲンさんは話す。自分と妻は避難できたが、娘のインドリさん(20)は逃げ遅れ、後に浜辺で遺体で見つかった。

「娘は食器棚にしがみつこうとしたが、流れが激しく手が離れてしまった」とスゲンさん。「私たちは昨日、娘を埋葬した。打ちのめされている」

 人口約12万5000人のアドナラ島は、今回の豪雨で甚大な被害を受けた地域の一つだ。インドネシアと隣国東ティモールでは洪水と土砂災害により、合わせて150人以上が死亡した。

 両国を襲った熱帯低気圧は、域内を襲ったものとしてはここ数年で最も勢力が強く、離島群を直撃したため大きな被害が出た。

 都市圏から遠く離れ、ビーチと火山が点在するアドナラ島には船でしか行けず、島内に病院はない。

 7日時点で島民の死者は50人以上、10人余りが行方不明となっている。(c)AFP/Pedro Paolo