【4月21日 AFP】新型コロナウイルス危機で操縦桿(かん)を握る時間が激減した航空会社のパイロットらは、勘が鈍らないように訓練を続けている。そうした場で活用されているのがフライトシミュレーターだ。

 操縦士は長期間、地上待機することはできない。パイロット免許を維持するには、国連(UN)の国際民間航空機関(ICAO)が規定する最低要件を満たさなければならず、過去3か月間以内に3回の離着陸が義務付けられている。

 通常ならこうした要件が問題になることはない、とドイツ・ミュンヘン(Munich)を拠点とするパイロットのタンヤ・ハルテル(Tanja Harter)氏は言う。自身はエアバス(Airbus)A320型機を操縦し、約4万人の飛行士を代表する欧州コックピット協会(ECA)の技術問題責任者を務める。

 だが減便により、航空会社によっては航空機の最大80%が運航休止となっている中、パイロットの飛行時間の確保が問題になっている。

 その埋め合わせに利用されているのが最新技術のフライトシミュレーターで、パイロットは非常にリアルな環境で技能を磨くことができる。

 KLMオランダ航空(KLM Royal Dutch Airlines)の長距離パイロットで、ECAの会長を務めるオチャン・ドゥブラン(Otjan de Bruijn)氏は「フル・フライトシミュレーターは映像とモーション機能が備わっており、通常のフライトに98~99%類似している」と話す。

 仏航空大手エールフランス(Air France)のパイロットで航空業務の広報を担当するフィリップ・ラクルート(Philippe Lacroute)氏によると、1年前にフランスで最初のロックダウン(都市封鎖)が実施されて以降、同社では1日当たりのフライトシミュレーターの稼働時間は最長22時間に上っている。

 米国では最近、「腕がなまった」一部のパイロットがスムーズに着陸できなかったケースを伝える報道が何件かあった。

 報道で指摘されているのは、「ゴーアラウンド」の回数の増加だ。ゴーアラウンドは、着陸態勢に入ったパイロットが滑走路への進入を中止し、エンジン出力を上げて高度を上げ、もう一度着陸を試みることを意味する。