【4月11日 AFP】地球上で最速かつ最もハイテクなスポーツの一つは、ドローン(小型無人機)のレース。その頂点に立つのが韓国のカン・チャンヒョン(Kang Chang-hyeon)選手だ。だが、わずか18歳にしてすでに引き際を考えている。

「この才能は10代前半か10代半ばでピークが来る」と2019年世界チャンピオンのカン選手は語る。反射神経も年々衰え、小学生を含む年下のライバルを相手に「成人してから競うのはとても難しい」と言う。「今年が最後かもしれない」

 新型コロナウイルスの世界的大流行で、国際航空連盟(FAI)は2020年のドローンレース世界選手権を中止した。おそらくカン選手のピークの年であり、タイトル防衛の絶好のタイミングだった。「去年なら最高の戦いができたのに」

 カン選手と3人のチームメートは、韓国の首都ソウルの南にある華城(Hwaseong)市で訓練する。

 スタートの合図とともに、ドローンを障害物コースで思う存分飛ばす。せわしなく小刻みな指の動きでリモコンを操作、その間、VR(仮想現実)ゴーグルを通してドローン視点の映像を見る。

 およそ1分、3周でレースは終わる。その後、パイロットやコーチ、メカニック、さらに親たちがテントに集まり、飛行データを分析する。

 自動車のF1同様、ドローンの飛行も精密工学とパイロットの技量によるところが大きい。競技者やチームが作る特別仕様のドローンは最高時速170キロに達するが、レースは接近戦となり、タイムは1000分の1秒単位で計測される。

 まさに若いパイロットの世界だ。カン選手によると、素早い反射神経、高い識別能力、そして長時間の訓練が成功の秘訣(ひけつ)だ。

 12歳の少女チョン・リョウォン(Jeong Ryeo-won)選手がすでに背後に迫っている。「私のお手本となる人です。世界選手権で対戦して勝ちたい」と地方の大会後に語った。

 おもちゃのドローンを初めて飛ばしてからわずか3年後の2019年、カン選手は16歳にして中国で世界タイトルを取った。その大会では韓国勢が上位を占めた。

「とっさの判断が決め手になる」と語るカン選手。「誰が先行していようとも、ミスを抑え冷静さを保つのが重要だ」

 韓国中西部の洪城(Hongseong)郡にあるカン選手が通う高校は、多くの生徒を集めようと、操縦技術を教えるクラスを設けている。