【4月7日 Xinhua News】中国の18歳になる大学1年生、小紅(仮名)さんはこのほど、公益機関「中華遺嘱庫(中華遺言登録センター)」の上海第2登録センターに、自身の遺言を登録した。銀行口座にある2万元(1元=約17円)余りを、かつて自分がつらい思いをしていた時期に支えてくれたある友人に残したいという。

 小紅さんは「遺言を書くのは終点ではなく、新たな起点であり、これからはもっと真剣に生きることができる」と話す。

 この遺言では両親に財産を残していないが、将来稼いだお金は同じ口座に預け、資産が増えたら新たに遺言を登録し、遺産の受取人を増やすことにしている。

 同機関がこのほど発表した「2020中華遺嘱庫白書」によると、ますます多くの若者が遺言を登録するようになっている。2017年の時点で、1990年代生まれの若者55人が遺言を登録・保管、2020年末には計553人に達した。

 同機関のスタッフ、湯婷婷(Tang Tingting)さんは次のように説明した。遺言を登録している90年代生まれのうち、80%は自分の住宅を持っている。両親が子どもの名義で購入したものである場合が比較的多く、中には保有する株式の一部を子どもの名義にしている親もいる。「これがこうした人々が遺言を書こうとする重要な理由の一つで、彼らは何かあったときに財産が失われるのを防ごうとしている」。

 より多くの若者は精神的な必要性から遺言を書いている。

 中華遺嘱庫北京第2登録センターの馬暁萍(Ma Xiaoping)主任は「多くの人は仕事が忙しく、精神的なプレッシャーが大きい。遺言を書く過程で、生死の問題について考え、納得がいくと、プレッシャーがいくらか軽減される」と分析している。

 若者が遺言で残そうとする財産は高齢者に比べて多様であり、支付宝(アリペイ、Alipay)、微信支付(ウィーチャットペイ、WeChat Pay)、QQアカウント、各種ゲームのアカウントなどの仮想財産もよくみられる。

 新型コロナウイルス感染症の流行以降、同機関はミニプラグラム「微信遺言」へのコメント機能を開設したが、この機能でも若者がユーザーの主力になった。

 同機関は2020年に計7万件の「微信遺言」を受け取った。微信遺言をしたユーザーのうち、20~30歳が38・7%を占め、20歳以下が27・4%でこれに続いた。

 内容を見ると、普段は直接伝えにくい思いを配偶者や家族に残す人が大部分を占めた。中には、自分に代わって両親やペットの面倒を見るよう特定の人に依頼するものもある。

 中華遺嘱庫管理委員会の陳凱(Chen Kai)主任によると、微信遺言の機能は思いを伝えることがメインであり、財産分与は含まれていないという。

 馬主任は、ますます多くの若者が遺言をしているのは、社会全体の死に対する認識がよりオープンで理性的になっていることの表れだと指摘。また、「生前に死後の事を手配し、トラブルを回避するのは、法治社会においては比較的合理的なやり方だが、今やこの理念が人々に受け入れられるようになっている」と話している。(c)Xinhua News/AFPBB News