【4月13日 AFP】ヒンズー教の聖地、インド北部ハリドワール(Haridwar)では巡礼者が、魂が清められると信じガンジス(Ganges)川に身を沈める。その傍らで少年は、富を求めガンジス川に身を沈める。

 13歳のラフル・シン(Rahul Singh)さんは、巡礼者がガンジス川に投げ込む供物を拾って生計を立てる「コイン拾い」だ。

 シンさんは毎日6時間、先端に磁石を取り付けた長い棒を手に、胸まである深さの川で、巡礼者がお経を唱えながら投げ入れた貴重品を探す。

 30ルピー(約44円)分のコインを手に入れるとAFPに、「大変だけど楽しんでる」と語った。

 泳ぎがうまいことからジーンガー(エビの意)のあだ名を持つヤダブさんは6年前、1300ドル(約14万3000円)相当のネックレスを見つけた。

 22歳になった今、ヤダブさんはシンさんら15人のコイン拾いの少年を率いている。

 インドでは昨年、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が全国的に導入され、ハリドワールを訪れる巡礼者が数か月にわたり途絶えた。ヤダブさん率いるコイン拾いの少年たちは、手持ちのわずかな金で生活しなければならなくなった。

 しかし、巡礼者と同じく、ヤダブさんのガンジス川への信仰は揺るぎなかった。

 今年になり巡礼者が戻り始め、再びコイン拾いができるようになった。

「ガンジス川は私たちの母だ。決して子どもたちを空腹のまま寝かせることはない」とヤダブさんは話す。

 ヒンズー教の宗教儀礼で川は、中心的な役割を果たしている。信者らはお金や服、装飾品などを川にささげる。

 コイン拾いの少年たちは、川底に沈む供物の貴金属を足で探ったり、水に潜って裸眼で探したりする。1日の稼ぎは1人当たり300~400ルピー(約440~580円)ほどだ。

 コインを紙幣に交換するには20%の手数料が取られる。宝石は闇市場で小売価格の半額で、銅やステンレス製品は金属くずとして買い取られる。コインを十分拾えなかった時は、ココナツや宗教用具を拾って売りに行く。

 シンさんは2年前、北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州近くの実家を飛び出し、ハリドワールに来た。友人から泳ぎ方とコイン拾いを学んだ。シンさんは、川の近くのスラムの掘っ立て小屋で、コイン拾いの少年数十人と共同生活を送っている。

「実家の辺りは緊張状態でとても貧しかったけど、今はここで幸せだ」 (c)AFP/Jalees ANDRABI