【4月1日 CGTN Japanese】世界最大で最も感度の高い、「中国天眼」と呼ばれる500メートル口径球面電波望遠鏡(FAST)が北京時間3月31日午前零時、世界に向けて正式に開放されました。FASTのチーフエンジニア、姜鵬(Jiang Peng)氏によると、海外からの1回目の申請提出期間は3月31日午前零時から5月15日までの1カ月半となります。

 2020年12月、米領プエルトリコにあるアレシボ天文台の電波望遠鏡が崩壊したため、FASTは現存する人類唯一の巨大な目となりました。しかも、FASTの総合機能はアレシボ望遠鏡をはるかに上回っています。

 中国の古典『西遊記』に登場した二郎真君は、「天眼」によって幻を見抜く能力を持っていましたが、「中国天眼」ことFASTは137億光年よりも先の宇宙を見通せます。FASTは中国南西部の貴州省(Guizhou)平塘県(Pingtang)にあり、その建設プロジェクトは1994年に発足し、2016年9月に完工しました。その後、2019年4月に国内の天文学者に向けテスト開放され、2020年1月に正式稼働しました。

 貴州省の山間にあるこの大鍋のような望遠鏡FASTは、4450以上の反射ユニットから構成され、反射面積は25万平方メートル――サッカー場が約35面分に相当します。FASTの反射ユニットは高さ140メートル、幅206メートルの範囲内でリアルタイムに移動しながら、宇宙からの信号を探知できます。優れた「視力」を持っているFASTは137億光年より外の信号を受信できます。

 正式稼働からの1年間で、すでにFASTは科学界に多くの驚きをもたらしました。まずは300個以上ものパルサーの発見です。これは同じ時期に全世界の他の望遠鏡が発見したパルサーの総数の2倍に当たります。周知のように、地球上のナビゲーションシステムは宇宙では利用できません。持続的かつ安定した信号を発信するパルサーは宇宙探査においてナビゲーターの大役を果たすことになります。そのほか、FASTは宇宙の謎の一つである高速電波バーストを複数回発見し、うち一つが科学誌「ネイチャー(Nature)」の2020年10大科学発見に選ばれました。さらに、人類の夢の一つとも言える地球外知的生命体探査(SETI)におけるFASTの働きも世界の脚光を浴びています。

 天文学は開放的な性質を持つ学問であることから、FASTのプロジェクトは発足当初から全世界の科学界に向けた開放を計画していました。では今後、外国の科学者はどのようにFASTを利用できるのでしょうか。まず、各国の科学者は中国科学院国家天文台に観測申請をオンラインで提出できます。提出された申請書は中国天眼科学委員会傘下の時間分配委員会に取りまとめられ、国際的にトップの科学者たちからなる専門家チームの討論・審査を経て、プロジェクトごとに選出されます。一回目の申請提出期間は3月31日から5月15日までで、8月1日から観測時間が分配されます。なお、全体の10%以上の観測時間を外国の科学者たちに充てるとしています。

 天文学は多くの科学的発見を育む最先端の学問の一つです。FASTの建造中に開発されたワイヤ技術が香港・珠海・マカオを結ぶ港珠澳大橋に用いられたほか、多くの新材料や新技術が科学技術のイノベーションと産業のモデルチェンジを促しました。また、 FASTがもたらす恩恵は科学の分野にとどまらず、山奥で深遠なる宇宙を見つめる「天眼」は地元の経済発展や社会発展、地元住民の福祉増進にも貢献しています。

 FASTはすでに貴州省のランドマークとなり、「静寂観光」の理念が多くの科学愛好者や観光客を引き付け、平塘は「天文の町」に生まれ変わり、年間20万人以上の観光客が訪れています。一方、国家天文台は貴州師範大学に「中国天眼」データセンターを設置し、これに基づいて貴州省はSKAアジアデータセンターを建設し、国際天文学界におけるもう一つの科学研究プラットフォームが誕生する見込みで、中国西部地区にスーパーコンピューティングセンターのなかった時代は間もなく終わります。(c)CGTN Japanese/AFPBB News