【5月12日 AFP】北アフリカのリビアにある古代ギリシャの植民都市キュレネ(Cyrene)。その見事な遺跡は、2011年に起きた革命と、その後10年続いた内戦を耐え抜いた。しかし今、ブルドーザーによる破壊と略奪という新たな脅威にさらされている。

 リビアの地中海沿岸部のほぼ東端にある風の強い丘の上。ゼウス(Zeus)の神殿では、数か月続く停戦期間を利用して訪れた数人のリビア人旅行者が暖かい日差しを浴びながら散策していた。

 アポロン(Apollo)の神殿や円形劇場を巡った後は、キュレネの博物館へ。ここには、頭部のないギリシャ神の胸像や大理石の裸体像が所蔵されている。

 紀元前7世紀に建造された都市キュレネは1982年、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録された。世界遺産のリストには、「古代ギリシャの主要都市の一つ」で「1000年の歴史が遺跡に刻まれている」と記されている。

 だが、キュレネの保護地域の境界の外では、現シャハト(Shahat)の町の住民たちが国の管理している土地を占有し、不動産業者に売却している。その他の地区も、略奪した遺物を密輸して売りさばこうとする連中に掘り起こされている。

「中には、遺物がある地域にやって来てブルドーザーで土地をならし、分割して売却し、値が付けられないほど貴重な遺跡の上に住宅地を造成しようとするやからもいる」と、キュレネの文化遺産担当局のアデル・アブ・フェジュラ(Adel Abu Fejra)氏は言う。

 アブ・フェジュラ氏は、こうした土地は当局の保護下にある地域の境界外なので、失われたものがどれほどになるのか見当もつかないと嘆いた。

 キュレネは、エジプト国境とリビア東部のベンガジ(Benghazi)の中間に位置する。2011年、ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の長期独裁政権に反旗を翻した主要都市の一つがベンガジだ。

 革命以後、リビアは無政府状態に陥って戦闘が続き、豊かな古代遺産に対する懸念が高まった。