【4月1日 AFP】独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は3月31日、電気自動車(EV)への転換をアピールする目的で米国法人の名称を「ボルツワーゲン(Voltswagen)」に変更すると「うそ」の報道発表を行ったことを謝罪した。メディア各社は激怒しており、AFPは「背信行為」だと批判している。

 問題となっているのは、VWが3月30日に行った報道発表。信ぴょう性を疑う向きもあったが、同社広報が事実だと主張したため、メディア各社は一斉に報じた。その後VWは、社名変更はマーケティングチームが考案したジョークだったと認めた。

 VW米国法人はAFPに宛てた文書で、同社がEVを重視していることに「楽しくて面白い方法」で注目を集めるための「エープリルフールのうそ」だったと説明。「ソーシャルメディアでは好意的な反応が多く、今回のキャンペーンが消費者の心に響いたことを示している」と述べた一方、「この発表が一部の人々を動揺させたことは認識しており、混乱を招いたことについてはおわびする」とした。

 メディア各社は、今回の発表に怒りをあらわにしている。VWはディーゼル車の排ガス不正問題からの信頼回復の途上にあることから、あまりに無神経だと指摘する声もある。

 AFPの編集トップであるフィル・チェットウィンド(Phil Chetwynd)グローバルニュースディレクターは、VWグループに対し、「われわれは、広報担当者が情報の一部について確認したり、コメントしたりする立場にないことは理解している。だが、虚偽の発表をするとは考えていない」と正式に抗議した。

 抗議文には、「真面目なジャーナリストや報道機関を、VWのような企業がマーケティングや広告の目的で利用するべきではないと強く考える。われわれにとって、これは非常に重大な背信行為であり、二度と繰り返されてはならない」と記されている。

 米紙USAトゥデー(USA Today)のビジネス担当記者ネイサン・ボミー(Nathan Bomey)氏も、「これはジョークなどではない。詐欺だ」と怒りを表明。米国にはフェイクニュースの問題があるとして、「VWもその仲間入りをした。もはや信頼できない」とツイッター(Twitter)で非難した。

 うその記者発表を受け、VWグループの株価は30日、独フランクフルト市場で5%近く上昇した。31日の株価は0.8%下落した。(c)AFP