【4月11日 AFP】ドイツ人観光客のタンヤ・ブッシャー(Tanya Buscher)さんは最近、マヨルカ(Mallorca)島への航空券を予約した。新型コロナウイルスの流行が始まってから初めての休暇で「少し」罪悪感を覚えたが、ターコイズブルーの海が目の前に広がると、その後ろめたさはすぐに消えたと話す。

 アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相が、ウイルスの拡散防止を目的にイースター(Easter、復活祭)中の国外旅行を控えるよう呼びかける中、ブッシャーさんはスペインのマヨルカ島を目指してドルトムント(Dortmund)を出発した。

 マヨルカ島のあるバレアレス諸島(Balearic Islands)は、ドイツ人観光客に人気がある。同諸島での感染率は低く、独政府はバレアレス諸島から帰国する際の入国要件を緩和。これを受けて、観光旅行の予約件数は3月中旬以降、急増している。

 スペインではこの時期、感染拡大を防止するため、自国民の地域間移動を制限しているが、ブッシャーさんのような外国からの旅行者は、PCR検査が陰性であれば訪問は可能だ。ただドイツ人の場合は、帰国時にも陰性であることを示す必要がある。

■自由と幸せ

 ハンブルク(Hamburgに戻るためにPCR検査を受けたビルギット・リーク(Birgit Leeck)さん(53)は、「本当に休息が必要でした。誰とも会わずに自宅で仕事をするのは大変です」と語る。マヨルカ島には1週間滞在したという。

 リークさんは、ドイツの「第17州」と冗談めかして呼ばれることもある島の美しいビーチを歩きながら、「自由と幸せ、希望」を見つけたと話した。

 地元のホテル協会FEHMによると、ドイツからの予約は増えているもののホテルの稼働率はまだまだ低く、営業をしているホテルは全体の13%にとどまっている。また、スペイン空港・航空管制公団(AENA)も、地元空港の利用率が昨年の同時期と比べて60〜80%減少しているとしている。

 宿泊施設向け管理サービスを提供するGruphotelのフェルナンド・ゴンサレス(Fernando Gonzalez)氏は、ビーチ沿いのホテル「アカプルコプラヤ(Acapulco Playa)」では例年、イースター休暇中の宿泊率は90%に上るが、今年は10%にとどまっていると指摘した。

 観光業に依存する島の経済は昨年、24%縮小した。ホテルでは利用客を安心させるため、施設内の各所に手指消毒剤を設置し、ビュッフェの入り口で検温を実施するなどの対策を講じている。「安全で管理の行き届いた方法で営業する以外に解決策はない」とゴンサレス氏は語る。

 感染拡大の防止策として、バーやレストランは午後5時に閉まるため、島内はいつもより静かだ。

 バーで働くあるウエーターは、利用客の95%を占めるというドイツ人観光客の登場に「ほっとした」と話した。(c)AFP/Emmanuelle MICHEL