【4月1日 AFP】世界の農耕地の3分の1に、農薬の化学成分が長期的に残留することによる汚染の「高い危険性」があるとの研究結果が3月29日、発表された。農薬の残留物は、上水道に浸出したり生物多様性を脅かしたりする恐れがあるという。

 農業生産の拡大に伴い、農薬の使用量が世界的に急増していることで、環境被害の懸念と有害化学物質の使用削減を求める声がともに高まっている。

 英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された今回の研究論文で、オーストラリアの研究チームは、農薬の有効成分(植物や虫に対して薬効を発揮する成分)92種の使用に関するデータを用いて世界168か国における汚染リスクをモデル化し、「農薬汚染の危険性が世界の広範囲に及んでいる」ことを明らかにした。

 論文は、世界の農耕地全体の64%(約2450万平方キロ)に複数の有効成分による農薬汚染の危険性があり、31%に高い危険性があることを明らかにした。

 研究では、南アフリカ、中国、インド、オーストラリア、アルゼンチンの複数の生態系について、高い汚染リスク、重大な水不足、高度の生物多様性が重なり、極めて脆弱(ぜいじゃく)だと指摘した。

 論文の筆頭執筆者で、豪シドニー大学(University of Sydney)土木工学部のフィオナ・タン(Fiona Tang)氏は「この問題が深刻である理由は、潜在的な汚染が広範囲に及んでおり、危険性の高い地域の中にはそれと同時に高い生物多様性を有していたり、水危機に陥っていたりするところもあるからだ」と話す。

 タン氏によると、ある地域が潜在的な汚染ホットスポット(局所的な高濃度汚染域)となるのには、農薬の過剰使用や毒性の高い物質を含む農薬の使用など、多数の要因が関与すると考えられるという。

 寒さや土壌炭素含量の低さといった環境要因が農薬の無毒物質への分解を遅らせる可能性がある他、大雨によって農薬の大規模な流出が引き起こされる可能性もある。