■「景気動向は大きく左右されなくても、相応の経済損失」

 五輪の観戦客がもたらす経済効果は過大評価されがちだと指摘する声もある。英国の経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)は昨年11月の予測で、五輪客の支出を950億円と推定。これは日本の国内総生産(GDP)の0.02%に相当する。

 国内の観戦客の制限に関する決定はまだだが、観客数が制限され、観戦目当ての海外客が来なくなれば、経済損失は2000億円前後になると、野村総合研究所(Nomura Research Institute)エグゼクティブ・エコノミストの木内登英(Takahide Kiuchi)氏は試算。

「日本の景気動向を大きく左右するほどの規模ではないが、それでも相応の経済損失額であることは確かだ」と同研究所のコラムで述べている。

 観光業界が苦悩する一方で、今回の決定は社会に受け入れられている部分がある。

 世論調査によると、日本国民の大半は海外からの観客受け入れを見送った決定に賛成している。

 コロナ影響下の2020年は、日本のGDP成長率はマイナス4.8%となった。しかし、今年は輸出の底上げや景気刺激策などによる経済成長に期待が寄せられている。

 複数のエコノミストは、日本は消費を拡大させることで経済成長につなげるべきだと指摘している。

 国内旅行の需要はどうか。政府の支援金キャンペーンも奏功して、状況は2020年後半に持ち直した。しかし、感染が再拡大し、同キャンペーンは昨年12月下旬に終了した。

 飲食店の営業時間の短縮要請などがあり、観光業の不振は年初の緊急事態措置が終了した後も続いている。

 コロナ禍が収束すれば、インバウンド需要は復活するだろうと、日本旅館協会(Japan Ryokan and Hotel Association)の佐藤英之(Hideyuki Sato)専務理事は言う。

 それまでは、我慢の日々が続く。

「これは、どこにもぶつけられない。どうしようもない」と佐藤氏。「何とか乗り切って、(コロナが)収束して旅行が再開すれば、訪日へのニーズは結構あると思う」

 映像は3月12日撮影。(c)AFP/Etienne BALMER/Hiroshi HIYAMA