【3月29日 AFP】スイス北西部の小さな町ムーティエ(Moutier)で28日、ドイツ語圏の州を離脱してフランス語圏の州に編入されることの是非を問う住民投票が行われ、賛成2114票、反対1740票で離脱・編入が決まった。

 スイスは26州からなる連邦国家で、公用語が四つある。1978年にフランス語圏の新たな州としてジュラ(Jura)州が誕生したが、該当地域の一部自治体は、ドイツ語圏に属するベルン(Bern)州への残留を希望した。人口約7500人のムーティエもその一つだった。

 この問題は、数十年間にわたってムーティエの住民らを深く分断してきた。

 地方選挙ではベルン州からの離脱を訴える政治家が幾度となく勝利。フランス語を話す住民は、ベルン州にたくさんあるドイツ語圏の小規模コミュニティーの一つに甘んじるよりも、ジュラ州の主要な町となるほうがずっとムーティエのためになると主張していた。

 2017年に行われた前回住民投票では、いったんは離脱賛成派がわずかな票差で勝利したが、投票に不正があったとして結果が覆された。この「ジュラ州問題」をめぐっては、離脱派が仏パリやベルギー・ブリュッセルのスイス大使館を占拠するなど過激な行動に出たこともある。

 このため、今回の住民投票ではトラブル回避を理由に厳重な警備が敷かれ、町を2区域に分けて離脱賛成と反対派の両陣営が交わらないよう対策が講じられた。連邦政府からも選挙監視員が派遣された。

 ただ、公共放送のフランス語放送局RTSは、住民投票の直前にムーティエへの疑わしい新規転入例が相次いでいると主張する内容の書簡が、ベルン州から連邦当局に宛てて送られたのを確認したと報じている。(c)AFP