【4月3日 AFP】スイスの小学生レオ君(8)は、銀色に光るコスチューム姿でヘルメットを慎重にかぶり、そして仲間の宇宙飛行士の卵とともに「宇宙船」へと向かった──。

「火星に本当に行きたいです」とわくわくした様子で話し、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーシビアランス(Perseverance)」計画に世界中がくぎ付けになる中、ビバリス(Vivalys)小学校の児童らは、自分たちの火星ミッションへの準備で大忙しだった。

 児童のグループは9か月かけて自分たちの火星計画を練り上げた。その計画は、スイスでただ一人の宇宙飛行士クロード・ニコリエ(Claude Nicollier)氏を含む、同国の宇宙専門家らによって審査された。

 そして3月、専門家らがゴーサインを出し、子どもたちのミッションが実行された。

 子どもたちは「ミッション・ビバリス:行き先・火星」と大きく書かれたロケット…ではなくバスに意気揚々と乗り込んだ。目的地は、西部の都市ローザンヌ(Lausanne)郊外の森で、ここにはバスでもアクセス可能な「火星宇宙ステーション」がある。

 8歳と9歳の児童16人は、3日間にわたり施設でさまざまな実験を行った。中には、長期の宇宙滞在を支えるための植物栽培など、宇宙飛行士が実際に行ったものと似た試みもあった。

 雪がちらつくのどかな環境は、吹きさらしでちりの舞う火星の表面よりもはるかにしのぎやすい。それでも、施設から外に出るときは必ず宇宙服とヘルメットを着用しなければならない。

 レオ君は、この「模擬火星ミッション」を通じて本物を見たい気持ちが強まったとAFPに語った。この時は、施設内部だったので、ヘルメット(実際にはスキューバダイビング用のマスクだが)は脇にかかえられていた。

 本物の宇宙ミッションに近づけるため、食事はすべてフリーズドライの宇宙食だった。ただ、当初計画されていた現地での宿泊は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により中止となった。

 数か月に及んだ準備期間中には、近隣のスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の学生らが主催した天文学やロケット工学のワークショップにも参加した。同大学は欧州で最も有名な工科大学の一つとして知られている。

■宇宙飛行士を目指す

 ローザンヌの火星宇宙ステーションで子どもらが最初に行った実験は、手作りの紙製ロケットの打ち上げだった。

 エアポンプから噴射される空気で、紙製のロケットは木と同じ高さまで打ち上げられ、子どもたちは歓声を上げた。

 自分たちで計画を練り上げたこと、そして数週間前に行われたニコリエ氏とのビデオ通話によって、グループ中の数人は宇宙飛行士になることを夢見るようになっていた。

「それが僕の計画だ」とレオ君。「科学者か宇宙飛行士になりたい」 (c)AFP/Nina LARSON