【3月26日 AFP】約120億年前の初期宇宙で、「宇宙網」として知られる発光する水素ガスのフィラメント(糸状構造)を初めて直接観測したとの研究結果を、仏リヨン天体物理学研究センター(Centre for Astrophysics Research in Lyon)などのチームがこのほど発表した。

 宇宙モデルでは以前からその存在が予測されていたが、宇宙網からの光を直接観測し、画像に捉えたのは今回が初めてだ。

 天文学者らはこれまで、宇宙網の様子をより部分的、間接的にしか見ることができていなかった。過去の研究では、ガス雲の存在を明らかにするために、クエーサー(準恒星状天体)の強力なエネルギー放射を自動車のヘッドライトのように利用し、視線方向の観測を行うというような手法が取られていた。だが、これまでの観測領域は、フィラメント構造のネットワーク全体を代表するものではない。

 研究チームは「MUSE」と呼ばれる3D分光装置を取り付けた欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)を、ハッブル超深宇宙領域(ハッブル・ウルトラ・ディープフィールド、HUDF)内の一区域に向け、計140時間以上かけて観測した。HUDFは米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)による超深宇宙探査の対象領域。

 8か月にわたる観測と1年に及ぶ観測データ処理の結果、宇宙が誕生したビッグバン(Big Bang)のわずか10億~20億年後には宇宙網が存在していたことが明らかになった。

 研究チームにとって最大の驚きは、宇宙網の水素ガスからの光が、膨大な数の矮小(わいしょう)銀河に由来するとシミュレーションで判明したことだった。これまでの観測で見つけることができず、存在も予想されていなかったこれらの膨大な数の矮小銀河では、無数の星が生まれているという。

 今回の研究結果は、18日の国際天文学誌アストロノミー&アストロフィジックス(Astronomy and Astrophysics)で発表された。(c)AFP