【3月28日 AFP】南アフリカの「ヘメルアンアード(Hemel en Aarde)」という地名は、アフリカーンス語で天と地を意味する。乾燥した山々と冷たい海に挟まれた谷は、ブドウ栽培とワイン醸造の楽園となっている。この地のブドウ園は、フレッシュで独特な風味を探し求める世界のワイン愛好家の間で名高い。

 ヘメルアンアードのワイン醸造家たちは、欧州の有名銘柄をまねるのではなく、南アフリカならではの確固たるアイデンティティーを持つワインを生産している。その味わいは遠い国から来たことを物語り、17世紀にフランスのユグノー派が開拓したブドウ園の歴史を継承している。

「私たちは新世界とは違うし、旧世界でもありません」と、醸造家のエマル・ロス(Emul Ross)さん(35)は語る。「ブルゴーニュ(Burgundy)を目指してはいませんが、より甘く果実味の強いニュージーランドや(米)オレゴン産のピノノワールよりも、そちらに近いスタイルではあります」

 ロスさんが働くアンソニー・ハミルトン・ラッセル(Anthony Hamilton Russell)さん(58)のブドウ園で栽培しているのは仏ブルゴーニュの品種で、さらに土壌はブルゴーニュのコートドニュイ(Cote de Nuits)地区同様、粘土の割合が高い。そのためか全く異なる気候にもかかわらず、「ブラインドテイスティングでは、ブルゴーニュだと思われることがあります」とラッセルさんは言う。

 彼のブドウ畑の端は、アフリカ最南端に特徴的な「フィンボス」と呼ばれる低木群につながっている。その先の崖の向こうには、インド洋との合流点に近い大西洋が広がっている。「私たちと南極の間には何もないと想像するのが好きです。空気がとても澄んでいます」

「除草剤は使用しません。土地が枯れてしまいますから」とラッセルさんは語った。

■テロワールの真の輝き

 米ニューヨークを拠点とするフランス人ソムリエ、パスカリーヌ・ルペルティエ(Pascaline Lepeltier)氏は、「果実味の強さにこだわりすぎない新鮮で上質なワイン」のおかげで、ヘメルアンアード一帯は「目覚ましい成功」を享受したと語る。

 ルペルティエ氏は、環境を尊重し、添加物を抑えるという彼らの選択こそが「テロワール(ブドウの生育環境)の真の輝き」の秘訣(ひけつ)だと述べた。

 同じくワイン醸造家のクリス・アルヘイト(Chris Alheit)さん(39)も、地元の有名人だ。ワインを語る時はいつも「ケープ(Cape)地方の真のアイデンティティーや南アフリカのDNA」について熱心に話す。「私たちはフランスのワインをまねようとはしていません」と言って、アルヘイトさんはほほ笑んだ。

 映像は2月23日撮影。(c)AFP/Gersende RAMBOURG