【3月24日 AFP】15人制ラグビーで、脳振とう対応のスピードと正確性を高める可能性を秘めた「画期的」な唾液検査があるという研究報告が、23日に発表された。

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 ラグビーをはじめとするコンタクトスポーツでは、一流選手たちのプレーの激しさに対する懸念が増す中で、脳振とうが大きな問題になっている。

 英イングランドでは22日、若年性認知症と診断された元代表のダン・スカボロー(Dan Scarbrough)氏が、2003年のW杯(Rugby World Cup)優勝メンバーであるスティーブ・トンプソン(Steve Thompson)氏らが起こしている集団訴訟に参加した。トンプソン氏らは、ワールドラグビー(World Rugby)をはじめとする統括団体を相手取り、団体は脳振とうのリスクから選手を守る努力を怠ったと訴えている。

 アメリカンフットボールでは、元選手が同様の訴訟を起こして協会が莫大(ばくだい)な補償金の支払いを命じられた事例があり、同様の事態を恐れる複数のスポーツで、脳振とうへの対応が課題になっている。

 その中で、今回英国の専門誌に掲載された「SCRUM(15人制ラグビーにおけるmiRNAを用いた脳振とうの研究)」の調査結果を示した論文では、史上初めて、唾液中のバイオマーカーと呼ばれる特定の分子を分析することで、選手の脳振とうの有無を判断できる可能性が示された。

 重要なのは、この検査では衝撃の直後に出る影響と、数日後に表れる影響の両方が分かる点で、プロのようにフィールド脇で医療スタッフによる本格的な治療が受けられないことが多いアマチュアラグビーでも、助けになる可能性がある。

 今回の論文は、バーミンガム大学(University of Birmingham)が3年にわたって実施した調査プログラムの結果をまとめたもので、イングランドラグビー協会(RFU)も関わっている。調査では、プレミアシップとチャンピオンシップという、イングランドの1部と2部の男子プロ選手1028人を対象にバイオマーカー分析を実施し、脳振とうを96パーセントの精度で診断できることが分かった。

 調査結果は次週行われるワールドラグビーのシンポジウムでも紹介される予定で、別のトップレベルの大会二つでも、唾液検査が試験的に実施される見通しだという。(c)AFP/Julian Guyer