■NFTで「新しい音楽の時代が到来」

 キングス・オブ・レオンが利用したNFTのオークションプラットフォーム「イエローハート(YellowHeart)」のジョシュ・カッツ(Josh Katz)最高経営責任者(CEO)は、NFTによって「新しい音楽の時代が到来」したと主張する。

「NFTとブロックチェーン技術を利用することで、音楽業界はより非集中化し、それによってファンとアーティストの共生関係が育まれるだろう」とカッツ氏はAFPに語った。

「アーティストは自分のコンテンツを再び収益化できるようになり、ファンはコンテンツやコンサートチケットを購入する際に透明性を確保できるようになるはずだ」

 NFTによる新たな機会を活用しているアーティストには他に、米人気ハードロックバンド「リンキン・パーク(Linkin Park)」のマイク・シノダ(Mike Shinoda)やカナダ人シンガーのグライムス(Grimes)らがいる。グライムスの場合は、オーディオビジュアルの作品コレクションをNFTで販売し、約600万ドル(約6億5000万円)を売り上げた。

■著作権侵害のリスクは?

 だが、誰もがNFTは良いことずくめだと思っているわけではない。

「この技術がアーティストの利益になるなら素晴らしいが、よほど注意しないと、アーティスト自身の著作権を奪われかねない」と指摘するのは、デジタル時代の音楽に関する著作を持つエミリー・ゴノー(Emily Gonneau)氏だ。

「誰でも、インターネットで入手したどんなものでもサンプリングして、NFTの作成者は自分だと言い張ることができる(中略)そうなると、何でもありになって荒稼ぎしようとする動きが生まれてしまう」

 オンラインマガジンのデクリプト(Decrypt)によると実際、デジタルアーティストが、NFTプラットフォーム上で自分の作品が勝手に販売されているのを見つけた例もすでにいくつかある。

 ブロックチェーンは匿名性が高く、分散型のシステムであるため、こうした著作権侵害を防ぐのは難しい。

 一方で、ブロックチェーン投資コンサルタントのエロイーサ・マルケソーニ(Eloisa Marchesoni)氏は、NFTを利用すれば、アーティスト本人が発行したものだという確認は非常に容易になると主張する。それぞれのアート作品やコンサートのチケット、コレクターズアイテムについて、偽造不可能なデジタル署名がブロックチェーン上に記録されるからだ。

「時間とお金に余裕のある人がレアなものを独占しようとする点では、従来のアート市場と変わらない」とマルケソーニ氏。「でも今は民主化が進んでいて、NFTなら、誰でも簡単にオンラインで購入できる」と続けた。(c)AFP/Philippe Grelard and Eric Randolph