【3月24日 AFP】新型コロナウイルス流行によるロックダウン(都市封鎖)という未知の領域に踏み込んでから1年を経たフランスで、あるグループがさらに極度の閉じこもり状態に入った。時間の分からない地下で6週間近くを過ごし、極端な孤立が人間にもたらす影響を調べる実験だ。

「ディープタイム(深い時間)」と呼ばれるこの実験に参加しているのは、仏系スイス人探検家クリスティアン・クロット(Christian Clot)氏をはじめとする男女15人。今月14日の夜から、仏トゥールーズ(Toulouse)南方のピレネー山脈(Pyrenees)にある広大なロンブリーブ(Lombrives)洞窟で生活している。

 グループは電話や時計、自然光を奪われた状態で、40日間にわたって地下の洞窟に住む。最低限のプライバシーを守るためのテントは各自にある。

 クロット氏は洞窟に入る数時間前に行われた記者会見で「生活空間は三つに分けて設けられている。一つは就寝する場所、もう一つは生活する場所、それから動物相と植物相を中心に地形学的研究を行う場所だ」と説明した。

 だがこの研究の主な対象は、27歳から50歳までの男女それぞれ7人のボランティアとクロット氏本人だ。一行は常に気温12度、湿度95%の環境に適応しなければならない。

 科学者十数人がモニターできるように、参加者はセンサーを装備している。通常の時空間の基準がないところで、人間がどのように反応するかを探るのだ。

 モニターチームの一員で、パリ高等師範学校(Ecole Normale SuperieurENS)認知神経科学部のエティエンヌ・ケクラン(Etienne Koechlin)部長は今回の実験について、この種のものとしては初の試みだと語る。「これまでのこの種の実験は身体の生理的リズムを研究するのが目的で、時間からの断絶が人間の認知的および感情的機能に与える影響に関するものはなかった」

 仏各地から無報酬で実験に参加しているボランティアの職業は、宝石商、麻酔専門医、警備員、とび職人などさまざまだ。

 洞窟の中には食料や器材計4トンが運び込まれ、参加者らは完全に自立した生活ができる。水は現地の泉から調達し、電気は自転車発電機で供給する。

 29歳の生物学者アルノー・ビュレル(Arnaud Burel)さんは実験への参加を決めた動機について「時間から切り離された生活を体験するため、コンピューターや携帯電話がひっきりなしに約束の時間や仕事を知らせてくる外の世界では不可能なことを体験するためです」と説明した。「一生のうちの40日なんて、大海の一滴にすぎないのでは?」と言う。

 幸いなことに、参加者は実験に耐えられなくなったら、いつでも離脱することができる。(c)AFP/Marisol RIFAI