【3月20日 東方新報】中国では14日の「白色情人節」(ホワイトデー)に多くのカップルが各地の役所を訪れ、婚姻登記をした。例年、ホワイトデーの届け出は比較的多いが、今年は特別。2021年3月14日という日付の後ろの4つの数字「1314(Yi san yi si)」の発音が「一生一世(Yi sheng yi shi)」の発音と似ており、「一生一緒に過ごそう」という願いを込められた。

 北京師範大学(Beijing Normal University)社会発展・公共政策学部の高穎(Gao Ying)教授は「結婚は人生で最も重要なイベント。良い日、年月を選ぶ『吉日選択』は古くからの習慣となっている」と話す。おめでたい日として最近選ばれる定番は、5月20日。520(Wu er ling)の発音が「アイラブユー」の「我愛你(Wo ai ni)」と似ているためだ。特に2020年5月20日は「2020520(愛你愛你、我愛你)」と繰り返しとなり、全国の役所に婚姻手続きをするカップルが殺到した。

 月別で人気なのは、8月と9月。「8(ba)」は「発(fa)」と発音が近く、「発財」(財を成す)、「発展」(発展する)につながる。「9(jiu)」は「久(jiu)」と同じ発音で「永遠」「長寿」に通じる。

 年によっても波がある。最近の婚姻登記件数を比較すると、2005年、2008年、2010年が例年に比べて著しく少なかった。これらは旧暦で立春がない「無春年」にあたった。旧暦を重視する中国では「無春年は結婚に凶」という考え方がある。立春は1年を24等分した二十四節気の一つで、毎年2月4日ごろ。例えば2005年は酉(とり)年だったが、旧暦では2005年2月9日から翌2006年1月28月までが酉年。一度も春節(旧正月、Lunar New Year)が来ない「無春年」となり、前年の申(さる)年の終わりに滑り込みで婚姻手続きを済ませるカップルが多かった。逆に、酉年翌年の2006年の戌(いぬ)年は旧暦の1年間に2回立春が訪れる「双春年」で、「二重の春=二重の幸福」ということから登記が多かった。

 新しい人生の門出に縁起を担いで幸せを願うのはほほえましい話だが、その一方で中国では結婚そのものが急減している問題に直面している。婚姻登記件数は2013年の1346万件から毎年減少を続け、2019年にはついに1000万台を割る947万件に落ち込んだ。独身生活を謳歌(おうか)したり、不動産価格や教育費の高騰で結婚して子どもを持つことに二の足を踏んだりする若者が増えているためだ。逆に離婚件数は2019年に410万件を数え、同年の婚姻件数の半数近くに迫っている。

 中国は長年続けた一人っ子政策の影響で、将来は世界的にも例のない超高齢化社会が到来する。経済成長が鈍化し、社会保障費が膨れ上がることが予想される。それだけに、「一生一世」を誓う幸福な夫婦が1組でも多く増えてほしいと最も願っているのは政府になるかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News